03.日本とアンリ・チェルヌスキ〜旅、コレクション、美術館〜 コンデ美術館−シャンティイ城 フォンテーヌブロー城美術館
コンデ美術館−シャンティイ城
シャンティイ城 の誕生   フランス最後の 王の息子   新ルネサンス 様式の城   珠玉の 美術コレクション
新ルネサンス様式で建てられた優美な城
▲シャンティイ城の入口の門。
© Lina Nakazawa
 オーマル公は、フランスに帰国するとすぐシャンティイの修復計画を再開します。亡命前に改築工事を担当していた、デュバン(Duban)が亡くなってしまったため、その計画を実行に移したのは、1855年にローマ賞(※1)を受賞した、当時の第一級の建築家、ドーメ(Pierre-Jérôme-Henri Daumet)です。工事は複雑なものでした。まず、大城館(Grand château)と小城館(Petit château)という2つの城をひとつにつなぐ計画を立てます。
2棟の建物の間には堀が通っており、また、大城館はその土台しか残っていませんでした。また、2棟は異なる時代に造られたので、様式も異なっていました。よって、双方の建物を活かしながら、(しかも大城館は三角形の変わった形をしていました)2棟を連結させ、調和させるのは容易な仕事ではありませんでした。
 新しい城の外観には、王政を思い出させるものとして共和党政権下の当時の人々があまり関心を示さなかった、17〜18世紀のいわゆる「ブルボン王朝」時代風ではなく、それ以前の「ヴァロワ王朝」風が選ばれます。すなわち、かつての城主、モンモランシー大元帥が生きた、フランス・ルネサンス時代にインスピレーションを得たものです。ドーメはフォンテーヌブロー城の建築も参考にしました。これは当時、「新ルネサンス様式」と呼ばれた流行の建築様式だったのですが、それだけではなく、ルネサンス時代のシャンティイの城主、アンヌ・ド・モンモランシーへのオーマル公のオマージュだったのではないでしょうか。オーマル公が作らせたモンモランシー大元帥の騎馬像の下には、ラテン語で「アンヌ・ド・モンモランシー、此処、改築されし自らの居城の前にあり」と記されています。
▲オーマル公が19世紀に作らせたアンヌ・ド・モンモランシーの騎馬像。
© Lina Nakazawa
 フランスに帰国する直前に、オーマル公は大切な妻や、最後のコンデ公となった 息子を亡くします。彼はその寂しさをうめるかのように、シャンティイの工事に力を注ぎ込みます。1870年代はフランスに共和制が定着しつつあった時代です。フランス王家に繋がる貴族にとっては、いよいよ完全な衰退期の始まりでした。実質的な権力を望むには、オーマル公は現実的すぎたのか、または、老い過ぎてしまったのでしょうか。彼に残されたのはもはや名誉と財力のみであったのかもしれません。
▲トリビューンと呼ばれる八角形の部屋。屋根にはオーマル公ゆかりの土地を描いた絵が天窓を囲む。
© Lina Nakazawa
 年老いた王子がその名誉を保ちながら住む城として、シャンティイは、権力からもパリからも程よい距離を保てる場所でした。シャンティイでは、オーマル公が政府の要人や、上流階級の人々を招くことがしばしばありました。招待客たちは森で狩や乗馬、庭でのボート遊び、貴族の楽しみである競馬など、さまざまな催し物を楽しむのはもちろん、オーマル公自慢のコレクションを鑑賞する、という楽しみもありました。
※1 ローマ賞(Grand prix de Rome):
王立(時代によっては帝国、国立)絵画、彫刻、建築アカデミーが授与する賞。受賞者はローマに留学する奨学金を与えられる。当時のフランスの地位ある芸術家の登竜門。

文:中澤理奈(Lina Nakazawa)
写真:美術館提供、中澤理奈、RMN

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コンデ美術館−シャンティイ城
所在地
Château de Chantilly - Musée Condé
BP 70243
Tel
+33(0)3 44 27 31 80
URL
http://www.chateaudechantilly.
com/
開館時間
<2011年4月2日-11月1日>
10:00-18:00
<2011年11月2日-2011年3月末>
10:30-17:00
休館日
火曜日
入館料
一般:10ユーロ
割引料金:7.5ユーロ
17歳以下:無料

アクセス
パリ北駅(Nord)からコンピエーニュ方面の列車に乗り(SNCFで27分、RERで45分)シャンティイ・グーヴュー駅(Chantilly Gouvieux)下車、タクシーで約10分。


MMFで出会えるコンデ美術館
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また、パンフレットもご用意しています。


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