まずひと言で言うと、フォンテーヌブローは極めて複雑な城です。フランスのどこにも、800年の歴史をもつ王家の城は存在しません。800年の歴史があるということは、800年分の資料が存在し、800年分の装飾が重なり合っている、ということです。この城では、部屋によっては3つの装飾一式(絨毯やカーテンも含む)が同時に存在するところもあります。同じ部屋を3通りに飾りつけることができる、ということです。これは非常に貴重なものです。
この複雑な建造物に取り組むには、膨大な資料と向き合う必要があります。残念ながら美術史の研究はあまり助けにはなりません。というのは、実は美術史とは20世紀にドイツで生まれ、フランスでは第2次世界大戦中に始めての授業が行われた、という極めて新しい学問で、研究が我々の実際の必要に追いついていない、というのが現実です。 例えば、ルイ14世はルイ14世様式の内装の中で暮らし、ルイ16世はルイ16世の、ナポレオンはアンピール様式(Style Empire)、と紋切り型の解説がよく行われています。
実はフォンテーヌブロー城の大きな問題のひとつに、来館者の受け入れが挙げられます。この城の様相や歴史があまりに複雑であるために、以前は、来館者はできるだけ少ない方がいい、という考えがあり、そのために現在の美術館の受け入れ態勢は理想的なものとは程遠いものです。しかし私はそうは思っていません。確かに知識がまったくなくてはこの城を理解することはできません。だからこそ、ここが教育の場になってほしいと願っているのです。ですから今では、いかに来館者が快適に見学できるか、という点に真剣に取り組んでいます。
アクセス パリ・リヨン(gare de Lyon)駅からフォンテーヌブロー・アヴォン(Fontainebleau-Avon)駅下車。駅からバスで約15分。
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