例えば今、フォンテーヌブロー城の、ある居室を「修復」しようとします。その時私は過去のある時代に遡り、その状態を復元しようとします。しかしその部屋にはもはや人は住んでいない。城には、今は一般の来館者を受け入れる、という機能がありますから、その機能を無視することはできません。するとどうしても、セキュリティーの問題や空調設備、見学順路などを考慮に入れる必要があります。そこでそれらの制約の下、工事を行うわけです。そこで出来上がるのは過去のどの瞬間にも存在したことのない、21世紀の新しい状態の居室なのです。 「修復」という概念をコード化した19世紀の建築家であり修復家のヴィオレ・ル・デュック(Viollet-le-Duc)は、過去のある時代を優先的に(彼の場合は中世でした)考えながらも、「過去に決して存在したことのないある完全な状態」を作り出すことが、「修復」の定義である、としました。
また、ルーヴルでは美術館開館以来、宮殿であった要素をどんどん排除していき、美術館としての機能を追い求めてきました。でもどうやら最近少しその行為を後悔し始めているようです。フォンテーヌブローはまだ若い美術館です。800年の歴史を持つ由緒ある城ですが、そこにはトイレやカフェテリアの設備も整った近代的建築物でもあります。この2つの相反する要素をうまくバランスを取りながら、私たちは仕事を進めていくのです。でもそれはとっても楽しいんですよ!
アクセス パリ・リヨン(gare de Lyon)駅からフォンテーヌブロー・アヴォン(Fontainebleau-Avon)駅下車。駅からバスで約15分。
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