「オルセー美術館展  パリのアール・ヌーヴォー―19世紀末の華麗な技と工芸―」その見どころと展覧会レポート

「オルセー美術館展  パリのアール・ヌーヴォー」展覧会レポート

19世紀末パリの邸宅──その言葉だけで、イマジネーションが広がってゆくような今回の展覧会。MMFスタッフは、さっそく会場を訪れて、その世界に足を踏み入れてみました。アール・ヌーヴォー芸術の真髄に触れるとともに、あまり知られていないオルセー美術館の魅力を堪能することのできた、展覧会の様子をレポートいたします。

世紀末パリの優雅な暮らしを体感できる展覧会

コミッショナー、遠藤望氏による注目の4作品

「オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー」展覧会レポート

▲「書斎」に展示されたモーリス・ブヴァルの《インク壺》。その奥がルイ・マジョレルの《書斎机“欄”》

 オルセー美術館といえば、ルノワール(Pierre-Auguste Renoir)やモネ(Claude Monet)といった印象派をはじめとする近代絵画を真っ先に思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。今回クローズアップされているのは、アール・ヌーヴォー、近代工芸の世界。日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、オルセー美術館は世界でも最も重要なアール・ヌーヴォー・コレクションを所蔵する美術館のひとつなのです。今回の展覧会では、オルセーが誇るそのコレクションを、より楽しく、わかりやすい形で展示する方法を模索した結果、「邸宅」をテーマにすることになったそうです。

 展示は当時の邸宅訪問の定石にのっとり、「サロン」から始まり「ダイニング・ルーム」へと続きます。ダイニングは今回の展覧会の最初のメイン・コーナーです。食器台や食卓、腰掛椅子などからなる、美しいマホガニーのダイニング・セットが展示室いっぱいに置かれ、私たちを世紀末パリの社交界へと誘います。
 今回の展覧会は、アール・ヌーヴォーといっても、その消費の場であった“パリ”をテーマにしていますが、「書斎」ではパリと並ぶアール・ヌーヴォーの拠点だったナンシーで活躍した作家ルイ・マジョレル(Louis Majorelle)やドーム兄弟(Auguste Daum/Antonin Daum)の傑作を見ることができます。

▲パリのアール・ヌーヴォーを代表する建築家ギマールの展示コーナー。
▲エクトル・ギマール《天井灯》
1909-1911年頃のモデル
© RMN (Musée d'Orsay) / Droits réservés / distributed by DNPartcom

 そこから、「貴婦人の部屋」へ足を踏み入れると、どこからか、“まさにパリの貴婦人”というような香りがただよい、私たちのイマジネーションを膨らませてくれます。(香りの正体は、1912年にゲラン社が発売した香水でした。)また、工芸品の展覧会の魅力は、作品の細部まで見ることができることにもありますが、ボンボン入れや扇子、宝飾品などが並ぶ「貴婦人の部屋」は、まさに驚きの細部発見の連続でした。

▲「貴婦人の部屋」に展示されたルネ・ラリックの《髪留め“はなうど”1対》。
裏側から見た放射状の花序が美しい
▲「貴婦人の部屋」の隣には、サラ・ベルナールの展示も

 展覧会の 棹尾 ( とうび ) を飾る展示が「パリの高級工芸産業」であることからもわかるように、「邸宅」が今回の展覧会の縦軸であるとすれば、その横軸にはしっかりと「伝統の技」がありました。そもそも、展覧会開催のきっかけには、「19世紀末パリの工芸技術の展示をしたい」というオルセー美術館からの提案があったそうです。1900年に建てられた駅舎を使ったオルセーにとって、19世紀末パリの工芸は、とても重要なコレクションなのです。

▲アルマン・ポワン、シャルル・ヴィリオン、オート=クレール組合工房《蛇形脚付き小櫃》
1897-1899年
© Musée d'Orsay, Dist RMN / Jean Schormans / distributed by DNPartcom
▲クレマン・マシエ《大皿》
1890年−1895年頃
©RMN (Musée d'Orsay) / Jean Schormans / distributed by DNPartcom

 パリを旅する多くの人が、オルセー美術館を訪れます。いつもはまっすぐ、最上階の近代絵画の展示室に向かっていた方も、次回の訪問では是非、中二階で足を止め、珠玉の工芸コレクションを堪能してみてください。オルセー美術館の違った顔が見えてくるはずです。

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「オルセー美術館展  パリのアール・ヌーヴォー―19世紀末の華麗な技と工芸―」その見どころと展覧会レポート

  • 会期
    2009年9月12日(土)〜11月29日(日)
  • 会場
    世田谷美術館
  • 所在地
    東京都世田谷区砧公園1-2
  • Tel
    03-5777-8600(ハローダイヤル)
  • URL
    美術館
    http://www.setagayaartmuseum.or.jp/
オルセー美術館展
  • 開館時間
    10:00-18:00
    *入館は閉館の30分前まで
  • 観覧料
    一般:1,300円
    65歳以上:1,100円
    大学・高校生:1,100円
    中学・小学生:600円

MMFで出会えるオルセー美術館展

  • MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、「オルセー美術館展 パリのアール・ヌーヴォー-19世紀末の華麗な技と工芸-」のカタログを閲覧いただけます。
    また、MMFブティックでは入場券を販売中です。


 

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