来世のための供物展 古代エジプト美術から読み解く永遠の生への思い

 作品の持ち味に合わせた、新しいアートの鑑賞法を提案している『ルーヴル- DNP ミュージアムラボ』。今回は、「古代エジプト人の世界観」、つまり、“かたち”のない概念を伝えるという難題に取り組みました。古代エジプト人の“思い”を体感するために、どんなシステムが開発されたのでしょう。その見どころをレポートします。

古代エジプトのための
鑑賞システム
研究者気分で作品を解読

 今回の目玉作品は、《内務の長サケルティのステラ》ですが、この作品を楽しむのには、ステラ(石碑)の解読が不可欠です。ミュージアムラボでは、展示作品の横に、大きなマルチメディア・ディスプレイが設置されていて、ステラの部分をタッチすると、そこを拡大し、描かれた内容を解説してくれました。描かれているのが誰なのか、奉納された供物は

古代エジプトのための
鑑賞システム
エジプト美術鑑賞の“鍵”を発見

 古代エジプト美術には、いくつかの規則があります。それを、楽しみながら発見できるのが、ホワイエにあるマルチメディア・ディスプレイです。画面には「視点を組み合わせる」「人体を表現する」「視点を組み合わせる「図像を校正する」という3つのキーワードが浮かび、そこから、ルーヴル美術館の収蔵品を通じて、鑑賞の“鍵”となるさまざまな約束事を発見できるのです。「男女性の肌はイエロー・オーカー、男性の肌はレッド・オーカー、神々の肌は青、緑、黒、あるいは黄色で表される」「一番大きく描かれた人物が最も重要な人物」「入れ物と中身を同時に描く」といった、いくつかのルールを覚えただけで、これまで馴染みの薄かったエジプト美術がぐっと身近に感じられました。

古代エジプトのための
鑑賞システム
古代エジプト人になりきる

 ルーヴル美術館のエジプト美術部門にある品々は、今ではもちろん美術品ですが、当時は何らかの用途を持っていました。ここでは、今回の出品作である《王の長官ホリラアの供物卓》を例に、その用途を“体感”しました。供物卓の複製の前に立ち、香炉や水さしを用いて供物奉納の儀式を執り行うのです。数千年前の古代エジプトの神官と同じ行為をしていると思うと、作品に対しても特別な理解が持てそうです。

 これまで、ルーヴル美術館をはじめ、海外の美術館にある膨大なエジプト美術コレクションの鑑賞に、疲れてしまった経験もありますが、今回の展覧会では、厳選された作品ひとつひとつをゆっくりと鑑賞し、学び、そして古代エジプト人の世界観を垣間見ることができました。次にルーヴルを訪れる際には、これまでとはまったく異なる理解で、エジプト美術を楽しめそうです。MMFwebサイトをご覧の皆さまも是非、古代エジプトを体感しに、東京・五反田の『ルーヴル- DNP ミュージアムラボ』を訪ねてみませんか?

 第7回展の「外交とセーヴル磁器展」で開発された鑑賞システムは、現在、ルーヴル美術館の工芸品部門に導入されているそうです。そして今回のために開発された鑑賞システム2点も、展覧会終了後にパリのルーヴル美術館古代エジプト美術部門の常設展示室に設置される予定とのこと。もちろん、本設置の前には、今回の展覧会での来館者の意見を反映しての改善がされるそうです。自分の体験が、ルーヴル美術館の一部になるかもしれないと考えると、背筋が伸びる思いがしました。

Update : 2011.11.15
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『ルーヴル - DNP ミュージアムラボ』
第8回展
「来世のための供物展
古代エジプト美術から読み解く
永遠の生への思い」

  • 会期
    〜2012年3月4日(日)
  • 会場
    ルーヴル - DNP ミュージアムラボ
    東京都品川区西五反田3-5-20
    DNP五反田ビル1F
  • URL
    http://museumlab.jp
  • 観覧予約
    ルーヴル - DNP ミュージアムラボは、事前予約制です。来館をご希望 の方はホームページ または電話にてご予約ください。
    観覧予約はこちら>>

    <Tel>
    ルーヴル - DNP ミュージアムラボ
    カスタマーセンター
    03-5435-0880>

    <受付時間>
    月曜〜 木曜日:11:00-17:00
    金曜日:11:00-21:00
    土・日曜日:9:00-18:00
    (月〜 金曜日の祝日、年末年始は休み)
  • 開館時間
    金曜日:18:00-21:00
    土・日曜日:10:00-18:00
  • 休館日
    金曜日が祝日の場合、保守点検日、展示替え期間、年末年始
  • 観覧料
    無料・予約制
 

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