ジャンヌ・ダルク生誕600年特集

美術作品でたどるジャンヌ・ダルクの生涯

 ジャンヌ・ダルクは1412年、神聖ローマ帝国との国境に近い、ドンレミーという小さな町(現在のロレーヌ地方)の、裕福な家庭に生まれました。当時は、イギリスとの間で長く続く百年戦争(1339‐1453)でフランスは荒廃し、人々は疲れ果て希望を失っていました。またフランス派とイギリス派に分かれ、このままではフランスの王位はイギリス王室の手に渡ってしまうかと思われていました。ロワール川の要所にあるフランス中部の街、オルレアンだけが孤島のように持ちこたえていましたが、1428年10月、オルレアンもイギリス軍に包囲されてしまいます。そんな時代に育ったジャンヌは、自らの命を賭けて国を救う旅に出たのでした。

大天使ミカエルの声に導かれ
ごく普通の少女として育っていたジャンヌですが、
13歳のある日、庭で遊んでいる時に初めて「声」を聞きます。
その声は大天使ミカエルと名乗り、
その後聖女マルガリータ、聖女カテリーナとともに何度も
ジャンヌのもとに現れ、オルレアンの包囲を破り、
シャルル7世を戴冠させ、祖国を救うよう告げたのです。
【写真】オルレアンのサント・クロワ大聖堂の回廊にあるステンドグラスには、ジャンヌの人生が描かれている。これは大天使ミカエルの声を聞くジャンヌ・ダルク
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17歳の少女、救国の旅に出る
それから4年―。ジャンヌが17歳になった1429年、
ついにジャンヌは祖国を救う旅に出ます。当時のキリスト教の教えでは
女が男装をして兵士たちと馬に乗る、などということは
断じて許されていませんでした。
彼女の行く手は簡単なものではありませんでしたが、
神に守られたジャンヌの様子に人々も少しずつ手を貸すようになります。
最初に向かった地、オルレアンの西方にあるシノンでは、
群衆の中に紛れたシャルル7世を見事発見し、王にランスで
戴冠式(*1)をさせるために、自らが神に遣わされたことを王に認めさせます。
*1 シャンパーニュ地方のランスの大聖堂では伝統的に歴代のフランス王の戴冠式(聖別式)が行われ、この儀式なしでは正式に神にフランス王と認められなかった。シャルル7世は戦争のため、ランスに赴くことができないでいた。 【写真】オルレアン歴史・考古博物館に展示されている、リュック=オリヴィエ・メルソン(Luc-Olivier Merson/1846-1920) 《シノンで王の前に跪くジャンヌ》のデジタル複製
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オルレアン奪回
1429年4月、神風に守られたジャンヌの軍隊は
ついにイギリス軍の包囲を抜け、オルレアンを奪回し、
5月8日にイギリス軍は撤退します。
勢いを取り戻したジャンヌが率いるフランス軍は、王を連れ、
勝利を重ねながら道を作り、その2ヶ月後ランスに到着。
そこでついに戴冠式を執り行い、
シャルル7世が神聖なフランス王となったのです。
【写真】オルレアン美術館入り口ホールに展示されている、ジャン=ジャック・シェレール(Jean-Jacques Scherrer/1855-1916)《イギリス軍に勝利を収め、オルレアンに入城するジャンヌ・ダルク》
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救国の乙女の悲劇的な最後
しかし、ようやく役目を果たしたジャンヌには、
さらなる困難が待ち受けていました。
シャルル7世の心が少しずつジャンヌから離れていき、
反ジャンヌ派の忠告を聞くようになったのです。
1430年5月、オルレアン解放から1年後、ジャンヌは捕らえられ、
異教裁判にかけられます。さらに1年後の1431年、ルーアンで、
ジャンヌは当時の最も重い刑である、生きたまま火あぶりにする、
という方法で死刑にかけられてしまいます。
【写真】火あぶりにされ、処刑されるジャンヌ
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聖女として祖国を見守る永遠の乙女
王を救い、国を救ったジャンヌは、わずか19年という悲劇の生涯を閉じました。
しかし彼女を聖女として崇める人々は絶えず、
1455〜56年にかけて復権裁判が行われます。
1920年には法王庁から正式に聖女に列せられました。
ジャンヌはフランスを救った乙女として人々の記憶にとどまり、
特にフランス革命時や19世紀の共和国再建時など、
フランスの歴史が動く時代には熱狂的な支持を集めることになりました。
また、オルレアンをはじめとするゆかりの地では
ジャンヌをたたえる祭りが絶えることなく、今も行われています。
【写真】フランス革命が勃発した1789年に描かれた版画。パリのバスティーユ襲撃に見立てたジャンヌのオルレアン進撃
©Cliché Centre Jeanne d'Arc
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Update:2012.9.1 文・写真:中澤理奈(Lina Nakazawa)
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