「月の光」や交響詩「海」、「牧神の午後への前奏曲」といった数々の名曲で知られるクロード・ドビュッシー(Claude Debussy/1862-1918)。今年2012年は、フランスが誇るこの音楽家の生誕150周年の記念の年「ドビュッシー・イヤー」です。世界各地で記念コンサートやイベントが開催される中、パリではオルセー美術館とオランジュリー美術館の共同企画「ドビュッシー、音楽と美術」展が開催され、話題を呼びました。そして、この展覧会は、現在、東京のブリヂストン美術館に巡回中。今月の特集では、待望の東京展をより楽しむための前知識とともに、会場の様子をレポートします。

1885年 油彩、板
25×21.5cm
オルセー美術館蔵
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski / distributed by AMF
音楽と美術が
とりわけ親密だった時代
「なぜ、音楽家ドビュッシーの生誕記念に美術展?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。じつは、ドビュッシーが生きた19世紀半ばから20世紀初頭は、音楽と美術をはじめ、文学、舞台芸術といったさまざまな芸術が、互いに親密な関係にあった時代でした。美術作品や文学作品にインスピレーションを受けた音楽が生まれ、その一方で、音楽に着想を得て多くの美術作品や文学作品が制作されました。
とりわけドビュッシーと音楽との関わりは深く、「音楽と同じくらい絵が好き」と自ら語ったほど。そして、アンリ・ルロール(Henry Lerolle/1848-1929)やモーリス・ドニ(Maurice Denis/1870-1943)といった交流のあった画家たちや、イギリスのラファエル前派といった同時代の芸術に影響を受けて作曲をし、ときに「版画」(1903年)や「管弦楽のための映像」(1905-1912年)といった視覚芸術を喚起するような作品を生み出していったのです。もちろん、ドビュッシーの音楽に霊感を与えられた画家たちも少なくありませんでした。
展覧会では、直接・間接的にドビュッシーと関わりのあった画家たちの作品が並びます。
ドビュッシーは「印象派」?「象徴派」?
古くは「音楽の印象派」とも呼ばれたドビュッシーですが、そもそも、「印象派」「象徴派」どちらに分類される音楽家なのでしょうか?その答えは、美術における「印象派」という言葉の成り立ちと深い関わりがあるようです。「印象派」とは、1874年、初めてのグループ展に出品されたクロード・モネ(Claude Monet/1840-1926)の作品《印象、日の出》(1873年)を評した批評家の文章をきっかけに生まれた言葉です。画面に筆触を残し、光の表現を追求したモネら新進画家たちは、筆触を残さない技法と、正確な輪郭線に囲まれた調和ある世界を目標とするアカデミーの規範と相容れず、揶揄の意味を込めて「印象派」と称されたのです。
そして、ドビュッシーもまた、その音楽的な革新性から「印象派」と揶揄されました。古来、連綿と体系付けられてきた楽式・和声を超え、自由な音の響きを重視したドビュッシーの感覚的な音楽は、あまりにも斬新だったがゆえに、批判の対象となったのです。
当時、ドビュッシーは「印象主義音楽」というレッテルに反発したといいます。そして、精神性を重視したドビュッシーの音楽は、現在では、「象徴派」に位置付けられています。印象派、象徴派の名画が揃う会場を訪れれば、ドビュッシーはどちらの流派に近いのか、感覚的に理解できるかもしれません。
- 会期
2012年7月14日(土)〜10月14日(日) - 会場
石橋財団ブリヂストン美術館 - 所在地
東京都中央区京橋1-10-1 - Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル) - URL
http://www.bridgestone-museum.gr.jp/ - 開館時間
10:00-18:00
(祝日を除く金曜日は20:00まで)
*入館は閉館の30分前まで - 休館日
月曜日
*ただし、9/17、10/8は開館 - 観覧料
一般:1,500円
シニア(65歳以上):1,300円
大学生・高校生:1,000円
中学生以下:無料
*開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は、公式サイト、ハローダイヤルでご確認ください。
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