ゴッホの風景画に広重の影響を読み解く


クレラー=ミュラー美術館所蔵
©Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands
右)歌川広重《大日本六十余州名所図絵 播磨・舞子ノ浜》1853年
ライデン国立民族学博物館所蔵
©Museum Volkenkunde, Leiden/Musée national d'Ethnologie
「ピナコテーク2」で行われているこの企画展は、ファン・ゴッホ(Van Gogh/1853-1890)の後期の作品を軸に、ゴッホが日本の浮世絵師、広重(Hiroshige Utagawa/1797-1858)から受けた影響を、構図やモチーフ、表現方法などのさまざまな角度から見ていくという大胆なコンセプトの展覧会です。印象派以降の画家たちが日本の浮世絵に大きく影響を受けたことは広く知られています。中でもファン・ゴッホが広重の模写を行っていたことは有名です。しかしそれら数点の模写だけが、ゴッホのジャポニスム作品ではないことを証明してくれるのが、この「ファン・ゴッホ―日本の夢」展です。ゴッホの作品を広重の版画と比較しながら、作品中に広重の影響、言うなればゴッホが見た「日本の夢」を見出していきます。
展示では風景画を中心とした30点以上のゴッホの作品を、広重の作品を参考図版として用いた解説と照らし合わせて紹介しています。自然、街、人物と、ゴッホの作品の中に


クレラー=ミュラー美術館所蔵
©Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands
右)歌川広重《東海道五十三次 戸塚宿》1833〜1834年
ライデン国立民族学博物館所蔵
©Museum Volkenkunde, Leiden/Musée national d'Ethnologie
発見できる広重との類似性は、偶然とは言いがたいものばかり。広重特有の奔放で大胆な構図だけでなく、地面に力強く張った木の根や、うねりながら伸びる枝や松の葉、風景に溶け込むように描かれた人物など、細部の表現に至るまで、興味深い対比がなされていることに注目です。
ゴッホが南仏に見た日本への憧れ
ゴッホは、弟で画商だったテオ(Théo van Gogh/1857-1891)とともに500点にものぼる日本の版画や画集をコレクションしており、現在それらはオランダのファン・ゴッホ美術館に保存されています。当時安価で手に入れることのできた日本の版画は、ゴッホの絵画に新たな息吹をもたらすものとして、不可欠だったのです。ゴッホは新しい風景を求めて移住した南仏アルルから、テオへと宛てた手紙に、次のようにつづっています。


クレラー=ミュラー美術館所蔵
©Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands
右)歌川広重《東海道五十三次 吉田宿》1833〜1834年
ライデン国立民族学博物館所蔵
©Museum Volkenkunde, Leiden/Musée national d'Ethnologie
「物価が高くても南仏にとどまる理由がある。日本の絵画が好きで、それに影響を受けていることは、どの印象派の画家にも共通している。しかし日本に行くことはない。よって日本に似ている南仏へ行く。要するに、新しい芸術の未来は南仏にあるのだと思う」
今回の企画展には、ゴッホが南仏で描いた風景画が多数含まれています。それらの作品を眺めていると、南仏の風景がゴッホの夢見た日本の風景と重なり合ってくるから不思議です。遠く離れた異なる地がふたりの巨匠を通してつながる――、そんな貴重な瞬間に立ち会うことのできる、またとない展覧会です。
- 所在地
ピナコテーク1
28, place de la Madeleine 75008 Paris
ピナコテーク2
8, rue Vignon 75009 Paris - Tel
+33(0)1 42 68 02 01 - URL
http://www.pinacotheque.com/ - 開館時間
10:00-18:30
水曜日、金曜日は21:00まで
2012年12月25日、2013年1月1日は
14:00-18:30 - 入館料
・「ファン・ゴッホ―日本の夢」展「広重―旅の芸術」展 それぞれ
一般:10ユーロ
割引料金:8ユーロ
・常設展
一般:10ユーロ
割引料金:8ユーロ
・共通券(ファン・ゴッホ展、広重展)
一般:17ユーロ
割引料金:14ユーロ
・共通券(ファン・ゴッホ展、広重展、常設展)
一般:22ユーロ
割引料金:18ユーロ - アクセス
地下鉄8、12、14番線Madeleine駅より徒歩1分 - 展覧会情報
「ファン・ゴッホ―日本の夢」展
「広重―旅の芸術」展
2012年10月3日〜2013年3月17日
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