Français 日本語
ピエールフォン城マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
informations 3 2 1

ナポレオン3世の寝室を出て、狭い通路を通ると豪華な部屋に出ます。とりわけ美しいのは女騎士(女騎士とは旧約聖書、古代、中世の人物像で、騎士道の理想を称揚しています)の間で、第二帝政の豪華さを体現しています。かつてはきっと、皇帝の武器や甲冑の名高いコレクションを展示し、客人を迎え入れ、舞踏会を執り行う場として使われていたに違いありません。22の窓から光を取り入れた明るい空間、すばらしい装飾、そして長さ52m、幅9.5m、高さ12mという壮大さは驚くほど。部屋の両側には彫像が置かれ、巨大な暖炉の上には皇后ウージェニー(1826-1920)とその侍女たちに似せてつくられた9体の女騎士の彫像が飾れています。

アレキサンダーの塔の中には、ヴィオレ=ル=デュックがその美を再発見した荒削りの石でできた素晴らしい階段があり、中世らしい趣を醸し出しています。寄せ木張りの床の屋根のある巡回路には、監視窓と縦長の開口部があり、中世には、この城が防衛の拠点であったことを思い起こさせます。もちろん、今ではここから外の景色を眺めることができます。上の階にはこの巡回路に沿うようにしてもうひとつ巡回路があります。

それから、ルネサンス期の階段を彷彿とさせる二重螺旋の階段があります。招待客と衛兵がお互いに鉢合わせになることなくすれ違うことのできるこの階段の構造は、素晴らしい発明といえましょう。

1階の女騎士の部屋の下には、巨大な衛兵の部屋があります。ここには大きな暖炉がありますが、その一部は当時のままのものです。また、中二階にある回廊は衛兵たちを監視するためのもので、壁に沿って15世紀の城の遺跡であるシャルルマーニュや、聖ミカエル、聖母の彫像が並んでいます。

隣の部屋には、ヴィオレ=ル=デュックの協力者であるルシアン・ヴィガノフスキ作の非常に大きな城の模型が展示されています。制作に10年を要したというこの模型は、驚くほど正確な出来栄えで、要塞、塔、主塔のある理想的な城の姿を描き出しています。

最後に、地下室に下りるのをお忘れにならないでくださいね。石膏像や19世紀の墓地を飾る彫刻が幾筋かの光に照らされていて、なんとも神秘的な雰囲気をたたえているのです。招待客のための翼には、芸術的な屋根葺きと配管工事を行うアトリエ、モンデュイ社製の屋根組みを飾る装飾物、構造物、彫像のコレクションが展示されています。例えば、オーギュスト・カン(1822-1894)作の《翼のあるライオン》(1883年)などがあります。

ピエールフォン城は大人から子どもまで、訪れるすべての人々を夢の世界へと誘う場所。子どもたちは、城塞での暮らしへと想像の翼を羽ばたかせ、大人はフランス史の象徴的なモニュメントである建築とその修復という偉業を発見することができるでしょう。また、フランスをはじめとするヨーロッパの映像作家にとっては、中世を舞台とした映画や連続テレビドラマを撮影するための格好の舞台装置ともなっています。
ヴィオレ=ル=デュックは、その修復方法が独断的で時代錯誤だとされ、賞賛とともに批判を受けてきました。しかし、評価のあり方に違いはあれども、その仕事が今なお影響を与え続ける19世紀の希有な建築家のひとりであることは間違いありません。その事実こそが、わたくしたちが、今なお彼にオマージュを捧げ続ける意義だといえましょう。

友情を込めて。

前のページへ    

Update : 2015.8.1

ページトップへ

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。