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1818年、銀行家でルイ=フィリップの外務大臣として非常に影響力のあったジャック・ラフィット(1767-1844)がこの領地を購入します。しかし、負債がかさんだことから庭園を分譲。残念なことに、このとき、素晴らしい大厩舎も破壊されてしまいました。1850年にジャック・ラフィットの娘は領地を再び売りに出し、その後も所有者がさまざまに変わりますが、1882年以降、城はメゾン=ラフィット城と呼ばれています。そして、1905年、城の荒廃を憂えた国家の手で買い上げられることとなり、1912年に一般公開、その2年後には歴史的建造物に指定されました。

城は完全な左右対称を描いた量感溢れる造形で、見事に調和のとれたフランス古典主義建築の好例といえましょう。優美な屋根はスレート葺きで、煙突があり、主翼から両翼が伸びる調和のとれた全体感が特徴的です。中庭側は、両側に低い棟がせり出し、その上部はテラスになっています。主翼は2階建てで、中央に大きく突き出た部分だけが3階建てで、城の表玄関があります。正面には、ルネ・ド・ロングイユと亡くなった妻の肖像が描かれたふたつのメダイヨンがあります。

控えめながら贅をつくしたファサードは、ピラスター(装飾のための付け柱)と円柱の重なりで装飾されています。円柱は古代の3つの柱式、1階はドーリア式、2階はイオニア式、3階はコリント式が採用されています。大きなテラスのある庭側のファサードはよりシンプルで、かつて豪華な花々の競演が楽しめたという大花壇へと向かって開かれています。主翼に比べると両翼は控えめで、ふたつのほっそりした柱廊が中庭側のテラスのある棟の代わりになっていて、より軽やかな印象です。ペディメント(破風)には「1646」と刻まれていますが、これはおそらく装飾が完成した年を表しているのでしょう。

城の内部は18世紀にアルトワ伯によって部分的に改装され、4つの居室があります。見学の際は、まず「版画の間」から入り、主人ルネ・ド・ロングイユの居室の次の間へと行きます。「版画の間」の壁には、城の歴代の所有者を描いた絵画が掛かっており、その中央に、高級家具職人コッソン(1737-1812)による素晴らしいビリヤード台があります。これはルイ=フィリップがチュイルリー宮のために購入したものです。
左手から、「捕虜の間」と呼ばれる豪華な部屋へ進みます。この部屋の暖炉は、30年戦争の勝者であるルイ13世へのオマージュとしてジャック・サラザン(1592-1660)が描いたデッサンをもとに、彫刻家ジル・ゲラン(1611-1678)がデザインしたもので、その装飾にちなんで「捕虜の間」と呼ばれているのです。ルイ13世は暖炉上部のメダイヨンに描かれ、跪いたふたりの捕虜がこれを支えています。捕虜のうちひとりは裸、もうひとりは国王が勝ち取った地方を象徴するローマの甲冑を身につけています。中央の浅浮き彫りは、ローマ皇帝として二輪馬車の上で勝ち誇るルイ13世を描いています。ユベール・ロベール(1733-1818)作《滝のある風景》(1779年)や、熱い色合いで溶岩流を見事に表現したヴォレール(1729-1799)作《ヴェスヴィオ火山の噴火》(1774年)などの絵画もご覧ください。

来たルートを戻って、美しい正面玄関へと参りましょう。もともとこの入り口には扉はなく、鉄柵の門で閉じるようになっていました。玄関から、1階のルネ・ド・ロングイユの居室と2階の国王の居室に行くことができます。その壮麗な装飾をご覧ください。上部はローマのファルネーゼ宮のミケランジェロの装飾を、8点のドーリア式円柱はチュイルリー宮のフィリベール・ドゥロルム(1514-1590)のものを模倣しています。円柱には、ルネ・ド・ロングイユとその妻の紋章――麦の穂、ツタ、月桂樹――があしらわれています。扉の上の4つの浅浮き彫りはジル・ゲラン作で、四元素を象徴しており、入り口に向かってセーヌ側がネプトゥヌス(水)とユピテル(火)、中庭側がキュベレ(大地)とユノ(大気)です。四隅には4羽の鷲が描かれていますが、猛禽類は視力が良いのでその「長い目(ロングイユ)」が、一家の名「ロングイユ」にちなんでいるのです。

建築の偉業ともいえる正面階段は、この城の中心となる部分のひとつです。上に丸天井をいただき、非常に珍しいことに中央の柱がなく、4つの踊り場によって区切られています。
1階はほとんど装飾されていないのに対し、2階はイオニア式の円柱が階段の吹き抜けを装飾しています。彫刻家フィリップ・ド・ビュイステール(1595-1688)によるもので、子ども、あるいはプットーたちの群像が、音楽と歌、科学と造形芸術、平和と戦争、そして愛と婚姻を象徴しています。

Update : 2017.10.1

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