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イヴ・サンローラン美術館マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。 バックナンバーを読む
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展示ケースには、毎年6月と12月にモロッコで制作していた準備段階のデッサンが展示されています。サンローランは1966年ピエール・ベルジェとともに初めてモロッコを訪れ、ここに家を購入しました。この国は、とりわけその光や色彩がサンローランにとって重要なインスピレーションの源となりました。服飾制作のスタート地点となるクロッキーは、その後、アトリエにまわされ、そこで服としての形を与えられます。ひとつひとつの型は布地のサンプルとともにアトリエ制作用カードに転記され、ここでアクセサリーも指定されます。コレクションの展示ボードにはすべてのモデル(型)が類型ごと(晩、日中など)に分類され、ショーの全体像を見渡すことができます。

コレクションを通じて、サンローランはさまざまな職人たち(織工、染物師、刺繍職人など)とコラボレーションしていました。ふたつ目の展示室にはそれを証明するように、1990年春夏コレクションの「私のメゾンへのオマージュ」と題された正真正銘の傑作が展示されています。丈の短いイブニングジャケットにほどこされた素晴らしい手仕事をご覧になってください。シルクオーガンザはメゾン・アブラハムが手がけたもの、金糸と、絹糸、スパンコールとタッセル、ラインストーンによる刺繍は、メゾン・ルザージュによるものです。サンローランが、自分のメゾンのサロンで鏡にシャンデリアと空が反射するのを見たことが、この作品のインスピレーション源となったそうです。

アフリカやアジアの芸術をこよなく愛したサンローランは、鮮やかな色彩ときらめく刺繍による「想像上の旅」で、私たちをエキゾチックな地平へと誘います。正真正銘の光の衣服、目がくらむようなシルクのアンサンブル、スペインからインスピレーションを得た1979年秋冬の闘牛士のコスチュームは、ボレロと金糸で織ったニッカーボッカーズからなっています。中国からの影響は1970年秋冬のイブニングスーツに見られます。これはサテンシルクのチュニックとニッカーボッカーズのアンサンブルで、蝶と花のモチーフで飾られています。ブーゲンビリアの刺繍で覆われた素晴らしいケープは、マラケシュのマジョレル庭園を思わせます。1976年のバレエ・リュスのコレクションのイブニングスーツも忘れてはなりません。サンローランはまた、アジアやアフリカ出身のモデルをショーに起用した最初のデザイナーでもあります。

中2階の小さな楕円形の展示室では映画『双頭の鷲』が上映されています。これは、個人としてはもっとも大規模なもののひとつに数えられる美術品コレクションを築いた、ピエール・ベルジェとイヴ・サンローランというふたりの比類ない関係についての映画で、おもにピエール・ベルジェが解説しています。彼らが築いた美術コレクションは2009年に売りに出されました。

2階は、石膏の襞飾りのついたクリーム色の装飾がほどこされ、BGM(サンローランが愛したオペラ歌手マリア・カラスが歌うオペラ『吟遊詩人』)と相まって、より儀式的な雰囲気です。こうした装飾が、サンローランが敬意を払い、新たな解釈を与えたモード史を引き立てる背景となっています。1997年秋冬の「イブニングドレス」は中世から着想を得たもの。中世の金銀細工を思わせるガラス石と金糸で刺繍された飾り紐のついた黒いベルベットの長袖ドレスは、中世の貴婦人の曲線を描いた細身のシルエットを忠実に表しています。彼はまた、17世紀、18世紀のルネサンスのドレスからも着想を得ています。宮廷の豊かさを表現するために壮麗な布地が使われており、1990年春夏コレクションのロング・イブニングドレス「ルイ15世のドレス」や「クリスチャン・ディオールへのオマージュ」では、背中に床まで届くプリーツをほどこしています。19世紀については、当時のブルジョワ邸宅のインテリアを思わせる象徴的な布をつかっています。そして20世紀はといえば、「狂乱の時代」から1940年代までの社会の発達を追いかけて、それぞれの時代のスタイルを再解釈しています。

Update : 2018.2.1

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