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イエールのカイユボット邸マダムの連載の一部(10館)は書籍でもお楽しみいただけます。バックナンバーを読む
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庭に向かって大きな窓があるビリヤードルームは、カイユボットの絵《ビリヤード》(1873-78年頃)にも描かれています。未完成ではありますが、ビリヤード台、2つのランプシェードがついたペンダントライト、得点を数えるための玉などを描き込んだこの作品が残されていたおかげで、この部屋を当時と同じように復元することができたのです。 ビリヤードルームの右手には、ゲームや音楽のための小さな「ゾエのサロン」があります。色とりどりの花柄の壁紙は19世紀のペルシャ製壁紙を復刻したものですが、これも寝椅子に座るカイユボットの従姉妹を描いた美しい肖像画《ゾエ・カイユボットの肖像》(1848-94年)の作中に描かれているのです。「ゾエのサロン」の反対側は410冊の本を収めた図書室。中にはレストラン経営者のピエール=フレデリック・ボレルの書いた『フランス美食辞典』もありますから、ぜひご覧になってみてください。

2階には、邸宅の歴史や歴代の所有者について説明した展示室があります。ここには、ヨットをこよなく愛し、13艇もの競技用ヨットを所有していたカイユボットの情熱を思い起こさせるように、彼のお気に入りの船「ローストビーフ号」の模型が展示されています。続く三つの部屋には、カイユボットの兄弟の人生に関する展示があり、ギュスターヴとマルティアルが極めて強い絆で結ばれた兄弟であったこと、そして写真家マルティアルのギュスターヴの作品への影響、とりわけ通りを俯瞰の構図で切り取ったパリの景観への影響を実感することができました。
今回の改装で最も素晴らしいのは、間違いなく夫婦の寝室でしょう。両親が亡くなった後はギュスターヴが使った空間で、2016年のオークションで購入された帝政期の素晴らしい家具が一揃い置かれています。また、1900年の写真を基にして、マルタン=ギヨーム・ビヤンネが作った家具類(ベッド、ナイトテーブル、タンス、書き物机、大きな鏡、肘掛け椅子)が当時のままに置かれていますが、これらはほかでは見ることのできない、極めて質の高い家具一式。マホガニー製の重厚なベッドは、金のメッキを施したブロンズで装飾され、シルクの天蓋は縁飾りと帝政の象徴である鷲で装飾されています。

見学の締めくくりは、3階に再現されたアトリエです。企画展の際には、ここにオリジナルの絵画が展示され、制作された場所で絵画を見るという贅沢な鑑賞ができる空間になっているのです。

この邸宅は、イル=ド=フランスでは唯一の王政復古期の内装を留めた建築。改装を経て、かつての華麗さを取り戻し、画家カイユボットがイエールの地でどのように暮らしたのかを理解するために欠かせない場所となっています。素晴らしい庭園を散歩したり、ボートに乗って河岸の風景を楽しんだりしながら、ギュスターヴが愛し描いた場所を発見できるのですから。
最後に菜園をご覧になるのもお忘れなく。カイユボットはこの菜園を主題にいくつか重要な作品を描いているのですよ。現在はボランティアの方々が日々の手入れをなさっています。

友情を込めて。

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Update : 2019.2.8

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