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コニャック=ジェイ美術館
Chers Amis

先月に引き続き、古き良きパリの趣きを宿すマレーでの美術散策を続けることにいたしましょう。この歴史地区でのそぞろ歩きは、まるで宝探しのようなもの。まずは、ためらうことなく人通りの多い道から外れ、パイエンヌ通りやエルゼヴィール通りのような小さな路地にお入りになってみて。そして、カルナヴァレ美術館とピカソ美術館のあいだを走るエルゼヴィール通り8番まで来られたら、こじんまりとした美しい邸宅「ドノン館」を訪ねてごらんになってください。そこは「啓蒙の世紀」と呼ばれる18世紀の美術を集めた、コニャック=ジェイのコレクションを所蔵する美の館です。
▲庭越しに望む美術館のファサード。
©A. de Montalembert
▲エルゼヴィール通り沿いの美術館入り口。
©A.de Montalembert
中庭を囲むように配された建物は、いずれも修復が行き届いていますが、なかでも中庭の奥にある高い屋根の本館は、16世紀に建てられたパリで最も古い建物のひとつ。重厚さと優雅さを兼ね備えたファサードの造りは、見事としかいいようがありません。1階からはパイエンヌ通りに面する小さなフランス式庭園に出ることができます。
   
この館は、幾度となく修復を繰り返してきましたが、間取りをあまり変えることなく、16世紀に建てられた当初の風情を残しています。ひとつひとつの部屋が決して広いとはいえないこの邸宅を、美術館に改装するのは容易ならぬことだったのでしょうね。展示スペースを確保するために、建物と建物が階段で繋がれているのですが、わたくしが残念に思いましたのは、その階段が特徴のないものだということ。立派な錬鉄製の手すりのある17世紀の石製の階段とは正反対の代物といってよいでしょう。
できれば、屋根裏部屋まで上がってみてください。企画展のために改装されたこの空間では、パリでもっとも美しい木組みの梁をご覧いただけます。伝統を受け継ぐ職人の技が生み出したその梁の素晴らしいことといったら!
▲ポール=ニコラ・メニエール《王家の肖像のある小箱》。
©Parisienne de Photographie
   
16世紀に建てられたこの館には、もともとボワズリー(羽目の木彫細工品)が施されていましたが、コニャック=ジェイのコレクションに数多くあった18世紀のボワズリーも、この邸宅を飾ることになりました。不思議なことに、異なる時代のものがひとつの館に同居していてもまったく違和感がなく、後に取り入れられたボワズリーもまた、その場にしっくりと馴染んでいます。
 
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