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オペラ・ガルニエ バックナンバーを読む
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▲赤いビロードで覆われた椅子
©A. de Montalembert

▲大ホール
©Le Palais Garnier, Photos Jean-Pierre Delagarde/Opéra national de Paris

オペラ座の西棟(スクリーブ通り側)は、かつて皇帝だけに許された空間でした。皇帝を乗せた車は、広く傾斜した道をたどって、そのまま2階のボックス席まで安全にアクセスすることができたのです。現在、オペラ座は工事中のため、一般の方々の入り口がこの西棟側の大きな幕の裏側にあります。そしてオペラ・ガルニエについてより一層の理解を深めたい方には、ガイド付きツアーを事前に予約することをおすすめします(英語のツアーがあります)。わたくしたちがこのツアーに参加した際には、ガイドの方は真っ先に大ホールへと連れていってくださいました。大ホールは、リハーサル中は見学が叶わないこともありますが、お昼の休憩時間中には入ることができますので、ぜひ一度は訪ねられてくださいね。

ガルニエは、当時モダンな素材であった鉄を構造に使って、この大ホールを造り上げました。その構造と、全体を赤と金でまとめた装飾はなんと見事なことでしょう。イタリアの劇場を彷彿とさせる円形のホールは5階まであり、900席ほどある座席はすべて赤いビロードで覆われています。飾り紐によって美しいドレープを生む緞帳には、玉総(たまぶさ)を模した絵が描かれており、その上には、1669年にルイ14世(1638-1715)が音楽アカデミーを設立したことを示す紋章が掲げられています。


▲マルク・シャガールによる天井画
©ADAGP, Paris & SPDA, Tokyo, 2010, Chagall(R)
©A. de Montalembert

そしてこの劇場を、あたかも魔法にかけられたような空間にするためにひと役かっているのが、ガルニエ自らがデザインした巨大なシャンデリアです。重さ7トン、高さ8mものこのシャンデリアは、金メッキを施したブロンズとクリスタルでできた唯一無二のもの。そしてこのシャンデリアは、シャガール(1887-1985)の絵画をなんと見事に引き立てていることでしょう。ド・ゴール政権下(1959-1969)で文化大臣を務めたアンドレ・マルロー(1901-1976)の依頼によって、シャガールは1964年、ガス灯の煤で汚れた天井画に代わるこの新しい作品を手掛けました。
詩情溢れるシャガールの天井画には、モーツァルトの『魔笛』(青い部分)といったオペラ作品や、チャイコフスキー(1840-1893)の『白鳥の湖』(黄色い部分)などのバレエ作品の場面が描かれています。そしてこの鮮やかな色の祭典の中には、シャガールその人をはじめ、たくさんの人物、そしてエッフェル塔や凱旋門、オペラ座などのパリのモニュメントが描かれているのが見てとれるでしょう。

これらすべての要素がひとつになってオペラ座を比類のない社交場に仕立てています。かつては、上演中も客席が照明で明るく照らされ、舞台の上だけでなく客席を含めたオペラ座全体がスペクタクルでした。観客は双眼鏡で、ボックス席に座る美しく優雅なご婦人方を眺めたのです。皆さまは1875年以来、左の扉の上にある5番ボックス席を占有しているのはどなたかお分かりになりますか? そう! かの有名な「オペラ座の怪人」です。今日でも、オペラ座では舞踏会やレセプションが数多く催されています。とりわけ外国の国家元首が観劇に訪れる際には、共和国衛兵隊が大階段に整列します。わたくしは光栄にも、そのような機会に恵まれたことがあるのですが、それはもう、忘れることができない光景でした。


▲オペラ座バレエ団の顔見せ
©Le Palais Garnier, Photos Jean-Pierre Delagarde/Opéra national de Paris

わたくしたちがガイド付きツアーに参加した折には、舞台の上で道具方がバレエの舞台装置の制作に忙しく立ち働いていらっしゃいました。舞台の面積は1,350m2ですが、毎年9月のバレエシーズンの開幕時期、特別な機会には、リハーサル場を開放して舞台を拡張し、その奥行きは50mにもなります。舞台は奥に行くに従って高くなるように若干傾斜がつけられています。この傾斜はダンサーにとっては障害になるのですが、観客にダンサーひとりひとりがより見えるような配慮がなされているのです。練習生からエトワール(舞台のスター)まで、パリのオペラ座バレエ団全体の顔見せは、本当に美しく感動的なスペクタクルですので、ぜひご覧になることをおすすめします。


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