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モンテ=クリスト城 バックナンバーを読む
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▲モンテ=クリスト城の内部
©JPB/Château de Monte-Cristo

それでは、城の中へとまいりましょう。まず、わたくしを出迎えてくれたのは、イヴ・ル・ブルシコー作の肖像画《モンテ=クリスト城の前のアレクサンドル・デュマ》(1975年)。白いズボンに赤い上着がとてもエレガントです。黒髪に褐色の肌、碧眼のデュマはたいへん魅力的な男性でした。この城の見学は、人間味に溢れ、かつ複雑な性格の持ち主であったデュマという人物を理解するための一助となることでしょう。


▲カルポー《アレクサンドル・デュマ・フィス(子)》
©RMN / Franck Raux

▲ナダールが撮影したアレクサンドル・デュマ・フィス(子)のポートレート
©RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski

1階の「ゲームの間」には、デュマの母の肖像画や父のデュマ将軍トマ=アレクサンドル・デュマ(1762-1806)のリトグラフ、子ども時代のデュマの肖像画などが飾られています。ステンドグラスに楽器が描かれていることから「音楽の間」と呼ばれる部屋では、数多くの女性と浮き名を流した“伊達男デュマ”にスポットが当てられています。デュマは何人もの女性と同時に恋愛関係を結び、スキャンダルを巻き起こしたこともありました。イダ・フェリエ(1811-1859)という女性と結婚しましたが、ふたりの関係は長くは続きませんでした。さまざまな女性との間に成した4人の子のうち、認知したのはふたりだけ。ひとりは、マリー・カトリーヌ・ロール・ラベ(1794-1868)との間に生まれた子で、1830年頃に描かれたパステルの肖像画や、見事な口ひげをたくわえたデュマ・フィスを刻んだ、カルポー(1827-1875)による胸像が残されています。彼は7歳の時に認知され、父と同じく作家となります。アレクサンドル・デュマ・フィス(1824-1895)です。彼が1848年に発表した『椿姫』は大成功を収め、『トラヴィアータ』のタイトルでオペラ化されました。デュマが認知したもうひとりの子、マリー=アレクサンドリン・デュマ(1837-1878)は、女優ベル・クレイルザムネ(1803-1875)との間に生まれた娘でした。


▲デュマの彫刻が飾られた展示室
©JPB/Château de Monte-Cristo

隣の食堂は、バルコニーから庭を見晴らせる居心地のいい空間です。窓の前には、シャピュ(1833-1891)作のデュマの胸像があり、像から放たれる力強さに圧倒されます。陽気なデュマは、人を招くのが大好きでした。招待客はデュマが自ら腕をふるった途方もないヴォリュームの料理を堪能しました。デュマは気前の良い歓待で有名だったのです。デュマは『料理事典』を執筆するほどの美食家でしたが、食堂には、この事典の挿絵なしの1873年の初版が展示されています。ここには牡蠣のオムレツや、ゾウの足のファルシなど、奇抜なレシピも載っているのですよ。

「緑の間」には、上に記したようなデュマを有名にした作品を題材にした版画が展示されており、目覚ましい成功を収めた演劇人としてのデュマを彷彿とさせます。これらの作品は、歴史劇、ロマン主義演劇の誕生を告げるものでした。デュマは小説家として成功した後も戯曲を書くことをやめず、『モンテ=クリスト伯』などの自作を戯曲に翻案しました。暖炉の上には、この作品が1918年に上演された時のポスターが飾られています。

2階にある小さな部屋には、疲れを知らぬこの天才のもうひとつの顔が紹介されています。デュマは作家であると同時に、何にでも手を出したのです。ジャーナリストとしては、自分の新聞を創刊し、そこに1844年に『三銃士』を発表します。これは、デュマが時事問題に意見しながら、作品を発表することを可能にしました。ペイズリー模様の部屋は、もともとはデュマの寝室でしたが、現在では家具は残っておらず、『三銃士』を表す4つの小さな彫刻や、羽飾りのついた帽子と剣といった三銃士の衣装が展示されています。『三銃士』の外国語翻訳版が並ぶ展示ケースを見ると、デュマの作品がいかに多くの国々で愛されてきたかがよく分かります。もちろん、日本語版もありましたよ。応接室には数々の旅行記が展示されており、『旅行の印象』(1835-1859年)をはじめとする手書き原稿を見ることができます。

さて、この城で最も素晴らしい部屋「ムーア風の間」へ参りましょう。デュマが呼び寄せたふたりのチュニジア人芸術家アージ・ユニス(Haaji Younis)とモハメド=ド・チュニス(Mohammed de Tunis)が装飾を手がけた部屋で、彼らの名前が壁に青い文字で記されています。1985年に当時と全く同じように再建され、化粧漆喰に繊細に刻まれた彫刻とアラベスク模様を堪能できます。


▲「ムーア風の間」
©JPB/Château de Monte-Cristo

▲「ムーア風の間」
©JPB/Château de Monte-Cristo

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