ポンピドー・センター 大解剖 ポンピドー・センター フロアマップ 異邦人画家が集った パリのカフェ ポンピドー・センター 館長インタビュー ポンピドー・センター 館長インタビュー
ジョルジュ・ポンピドー 国立芸術文化センター
  1月21日、東京・六本木に国立新美術館がオープンしました。
日本で5つめの国立美術館として設立されたこの美術館は、コレクションをもたない美術館。
既存の枠組みにとらわれることなく、美術館の新しい形、そして新たな美術との出会いを提供することをポリシーに掲げた
国立新美術館の展覧会は、ポンピドー・センター所蔵作品展『異邦人たちのパリ 1900〜2005』
2月7日から開催されるこの展覧会は、まさに東京に出現した新しい美術館のポリシーにふさわしい内容です。
今月のMMFでは、世界中の錚々たるアーティストの作品を有するパリのポンピドー・センターの魅力に迫ります。
どんな文化施設なのか―? 館内マップとテキストでポンピドー・センターを徹底解剖してみましょう。
©Andreas Licht
 
国立近代美術館
▲モダン・アートのフロアから眺めるパリの景色。素晴らしい背景となっている。
©Andreas Licht
フランスを代表するモダン&コンテンポラリー・アートの殿堂。1906年以降の作品が集められています。所蔵作品数はじつに5万8,000点を数え、約100カ国から5,000人以上のアーティストの作品が揃っており、コレクションはヨーロッパ最大規模を誇っています。
現代美術を世界的視野で紹介することができる素晴らしい美術館です。また近年になって芸術的価値を確立した写真のコレクションも充実してきました。開館30周年を記念して、2月1日からは1906年から1960年までの名作展が開催されます。国立近代美術館の企画展示は、一人の作家を深く掘り下げる回顧展に定評がありますが、2月5日まではイヴ・クライン(Yves Klein)、3月14日からは演劇の概念を変えたサミュエル・ベケット(Samuel Beckett)の展示が予定されています。
4階がコンテンポラリー・アート、5階がモダン・アート、6階が企画展示フロアとなっています。また1階にも企画展示室があり、地階のフォーラムでも催し物が行われます。さらにぜひ足を運んでいただきたいのが、広場横にあるアトリエ・ブランクーシです。
▲6階の企画展示のフロアのロビー。開放的な雰囲気で鑑賞の余韻をゆったりと味わえる。
©Andreas Licht
▲アトリエ・ブランクーシ。入場は無料。巨匠が束の間、席をはずしたかのような臨場感が漂う。
©Andreas Licht
これはブランクーシ(Constantin Brancusi)のアトリエをそのまま再現したもので、彫刻家の面影がいまだ残っているかのようなリアルな空間。ここでも小さい企画展が行われます。
 
ページトップへ
公共情報図書館(Bpi)
センターの3フロアを占め、1万m2の広さを誇る、登録の必要もなく、無料で誰でも利用できる図書館です。入り口はセンターの背面にあります。蔵書はなんと35万冊。視聴覚システムも充実し、世界のニュースを15の原語で見たり、1万2,000枚のCDなどを聴くこともできます。
▲オープン・エリアには2,200席が用意されており、自習席やコンピュータ席が並ぶ。
©Andreas Licht
▲テーマ別に分類されているCDのコーナー。世界の音楽が楽しめる。
©Andreas Licht
またポンピドー・センターとその付近はフリー・スポットとなっており、自分のコンピュータを使って研究できるのも大きな魅力です。3階には美術研究者のためのカンディンスキー図書館も併設され、世界から集まった専門家が利用しています。
このように多くの人に広く知識の門を開くこともポンピドー・センター設立の大きな目的でした。現在、図書館は毎朝、開館を待つ人で列ができるほどの人気です。
 
▲専門家のための資料が収められているカンディンスキー図書館。
©Andreas Licht
 
ページトップへ
映画館
▲マニアックなシネフィルが集まる。
©Andreas Licht
センター内にはふたつのシネマがあり、どちらも映画ファンが喜ぶファナティックな企画上映を行っています。監督の回顧上映は徹底したラインナップで、とくに高い評価を得ています。
今年は『プロスペクティブ・シネマ』と銘打った実験的なフィルム上映、さらにはダンス映画の特集、ロバーロ・フランクやヴィクトル・エリセ(Víctor Erice)、アッバス・キアロスタミ(Abbas Kiarostami)の回顧上映が行われることになっています。もちろん子供のためのプログラムも学校が休みの水曜日や土曜日に企画されています。
 
ページトップへ
子供のアトリエ
ポンピドー・センターの使命の一つは芸術の啓蒙です。とくに子供の芸術教育には力を注いでいます。企画展に合わせたアトリエ活動を行ったり、子供用のサイトを特別に作ったりとその活動も盛りだくさん。実際に絵を描いたり、ものを作ったりしながら、芸術を愛し、楽しむ情緒を小さい頃から養うことは、将来のアーティストや美術愛好家を育てるのに大切なことなのです。
▲自由自在に子供たちが遊びながら作った作品が並ぶ。アートの根源を見る思い。
©Andreas Licht
また、アートに触れる喜びが子供の健やかな成長の糧になると、ポンピドー・センターは考えます。
入り口を抜けるとすぐに現れるフォーラムには、ガラス張りの子供のアトリエがあり、実際に子供たちの楽しげな様子やユニークな作品を見ることができます。
 
ページトップへ
書店フラマリオン
▲あれもこれも欲しくなってしまう本がいっぱい。見ているだけで楽しく、あっという間に時間が過ぎてしまう書店。
©Andreas Licht
フォーラムの右奥にあるのが、リブレリー・フラマリオン。企画展、常設展などのカタログや絵はがきだけでなく、演劇、映画、建築、ファッション、デザインをはじめ、現代のカルチャーに関する全てのジャンルの本や図版、DVDなどが揃っています。その種類は1万5,000種。コンテンポラリーの分野では最大級の品揃えです。
また各国のデザインやファッションに関する雑誌も集めており、世界の“今”が見える場所でもあります。
ここは自費出版や限定本など珍しい本も置いています。もちろん持ち込みもOK。著者のサイン会やイベントなどのイベントも盛んに行われています。
 
ページトップへ
ブティック、プランタン・デザイン
フォーラム中2階にあるのが、優れたデザイン・グッズを集めているブティック、プランタン・デザインです。パリの有名デパート、プランタンの独自プロジェクトで、「味、旅、交流、誘惑、日常」をキーワードに専門のスタッフが世界中から、センスあふれるものをセレクト。3,000点をこえるオブジェがところ狭しとプレゼンテーションされています。
▲パリならではの素敵なものを探すにはうってつけの店。毎日品揃えが変わる。
©Andreas Licht
ポンピドー・センターのオリジナル・グッズやパリのお洒落なお土産、ワインやキッチン・グッズなどフランスらしいものもあれば、日本の文房具、イギリスのクリエーターのファッション小物など、本当に盛りだくさん。子供のおもちゃは自分で塗り絵をして使うぬいぐるみ、木のおもちゃなどとくに充実していますが、もちろん大人も十分楽しめるスペースであることは間違いありません。さすがデザインの本場の目が集めたもの、と納得されることでしょう。
 
ページトップへ
レストラン
▲ジョルジュの内観。天気のいい日、店内に飾られた銀色のオブジェが光を受けて輝く。
©Andreas Licht
最上階の6階にあるレストラン、ジョルジュ。ポンピドー・センターが2000年にリニューアルされた際にできたレストランで、そのお洒落な内観、本格的なグルメをうならせる創作料理のクオリティの高さに、食堂といったイメージが強かったミュージアム併設のレストランの概念を大きく変えた記念碑的な店です。
このレストランを作ったのはパリのカフェをモダンに変えたコスト兄弟(Gilbert Coste,Jean-Louis Coste)で、その時代を見る機敏な感覚は随所に活かされています。内装を担当したのは、ドミニク・ジャコブとブレンダン・マクラーレン。
雲のような、洞窟のような不思議なかたちの小部屋がいくつも並んでいます。レストランはガラス張りになっていて、昼間はパリの素晴らしい景色、夜はきらめく夜景が楽しめます。パリを楽しむための名所の一つ、であると言っても過言ではありません。
▲世界のテイストを取り入れたジョルジュの料理。見た目にも味にも驚きがある。
©Andreas Licht
 
ページトップへ
ポンピドー・センター・メッス分館 
▲センターの6階に出現した坂茂の筒型オフィス。
©Andreas Licht
今年、開館30周年を迎えたポンピドー・センターは、さらなる飛躍を準備しています。充実した近代美術館のコレクションを広く活用するため、フランスの北東部、ロレーヌ地方の首都メッスに分館を建築中です。来年2008年にオープン予定の分館の建築を手がけるのは坂茂とジャン・ド・ガスティーヌ(Jean de Gastines)。
完全なる木造建築が予定されています。現在パリのセンター6階テラスに、坂茂の筒型の事務所がお目見えしています。
  メッスはドイツ、ベルギー、ルクセンブルグにも近く、北海と地中海、パリからミュンヘンやプラハを結ぶ交通の要衝です。近年積極的にビジネスやテクノロジー企業の誘致を行い、現在とても活況を呈している都市。2007年にはTGVが通る予定で、そうなればパリからはたった1時間半の距離! メッスに分館を設置することは、フランスだけでなく、付近の国々の芸術愛好家にも恩恵があるということ。“国境を越える芸術”を実感できるはずです。
 
ページトップへ
Update: 2007.5 田中久美子(Kumiko TANAKA/文)/Andreas Licht(写真)

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。