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パリ左岸の美術散策

19世紀の若き青年たちがともに暮らした芸術揺籃の地

 モンパルナス界隈は、パリの南に位置する小高い丘に広がります。17世紀後半、ここに集う学生たちは、ギリシア神話に登場する文芸の女神である9人のミューズたちが住まいとした「パルナッソス山」にちなみ、この地域を「モンパルナス」(フランス語でパルナッソス山<Mont Parnasse>の意味)と呼び始めました。そしてルイ14世治世に始まった大通りの整備により、18世紀の終わり頃には緑豊かな美しい散歩道として知られるようになったのです。

 19世紀に入ると、この一帯には当時の大衆娯楽であったダンスホールが次々にオープンし、賑やかなこの界隈に魅せられた芸術家が集まってきました。若き日のヴィクトル・ユゴー、自由の女神像の作者である彫刻家バルトルディー(Bartholdy)など、今や世界的に名を馳せる芸術家も、モンパルナスに住居を構えその才能を磨いたのです。

アトリエ「ハチの巣(La Ruche)」
© Andreas Licht
 

 そして20世紀初頭には、「エコール・ド・パリ」と呼ばれるモディリアーニ(Amedeo Modigliani)、スーチン(Chaïm Soutine)、藤田嗣治(Léonard Foujita)など外国人芸術家の溜まり場となります。中でも画家のレジェ(Fernand Léger)やシャガール(Marc Chagall)、彫刻家のザッキン(Ossip Zadkine)やブランクーシ(Constantin Brancusi)らが暮らした「ハチの巣(La Ruche)」と呼ばれる12角形の集合住宅は、芸術家の街だったモンパルナスの歴史を語る建物です。このユニークな呼称は、まだ芸術で生計を立てられない貧しい画家たちが住むアトリエ兼住まいの個室を、ハチの巣のひとつひとつの穴に見立てたことからつけられました。

静謐な時が流れるブールデル美術館
© Photo RMN - Agence Bulloz
 

 第2次世界大戦後、この地域には、独自にプログラムを組む個性的な映画館が増え始めます。また小劇場も立ち並び、今も現役で活躍する歌姫ジュリエット・グレコ(Juliette Gréco)が、デビュー間もない頃に舞台に立ったのも、モンパルナスの劇場でした。そして1972年、このエリアの新しいシンボルであるモンパルナスタワーが旧モンパルナス鉄道駅の跡地に誕生。地上200mの最上階、59階からは360°パノラマでパリを見渡すことができます。タワーの東側にはザッキン美術館、南側には同じくこの界隈で作品づくりに励んだブールデルの美術館が、自身の名がついたブールデル通りの18番地にあります。

 芸術家の街としての面影と、タワーがそびえる新しい光景が共存するモンパルナス。この界隈は、歴史を守りながらも進化し続けるパリの姿を体現しているかのようです。

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モンパルナス界隈の美術館・博物館

カルティエ現代美術財団
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ブールデル美物館
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ザッキン美物館
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郵便博物館
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Update :2010.8.1 文 : 依田千穂(Chiho Yoda)
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