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ウィーン美術史美術館の
宝物のコンパクトガイド

帝都ウィーンに眠る宝の山

 上野の東京都美術館で「クリムト展 ウィーンと日本1900」(4/23〜7/10)が、六本木の国立新美術館では「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」(4/24~8/5)が開催され、大きな注目を集めています。ふたつの展覧会に併せて、MMM3階のアートスペースでも6月22日まで「ウィーン、世紀末のアート特集」を開催しています。
 今月の注目の一冊では、先月に引き続き、ウィーンが誇るハプスブルク家の財宝をコンパクトにまとめたガイドブックをご紹介します。
 1冊目のガイドは、『ウィーン美術工芸館』。ウィーン美術工芸館は、美術史美術館の美術工芸品のコレクションを集めた館です。2013年、改修工事と展示フロアを拡大してリニューアルオープンしました。20のテーマ別の部門に分類されたコレクションは、中世からルネサンス、バロック期を網羅しています。
 たとえば、表紙にもなっているベンヴェヌート・チェリーニの《サリエラ》は、金細工の塩壺。海の神であるネプチューンと大地の神であるテルスが向き合うように配され、エナメルや黒檀、象牙できらびやかに全体が装飾されています。後にこの《サリエラ》は、チロル大公フェルディナント2世が、フランス王シャルル9世の結婚式に際して、花婿のフランス王の代役を務めた返礼として王から大公に贈られました。このように、ひとつひとつの宝物には多彩な歴史の物語が秘められています。本ガイドではこうした作品にまつわるストーリーも丁寧に解説されているので、どんな人々が手にした宝なのか、想像しながらページを繰ってみるのも一興です。
 もう1冊のガイドは『ウィーン帝室宝物館』です。ホーフブルク宮殿の心臓部にあるこの宝物館には、ハプスブルク帝国の栄光を象徴するような宝の山が眠っています。中でも10世紀後半に制作された神聖ローマ帝国の帝冠やオーストリア帝国の帝冠など、多くの宝石がちりばめられた冠のコレクションは必見。本書では美しい写真によって、色褪せることのないその輝きを感じることができるでしょう。
 両ガイドブックはコンパクトながら、作品のアップはもちろん、展示風景をとらえた臨場感豊かな写真によって、まるで美術館を実際に訪問しているような気分を味わえます。ウィーンが有する、うっとりとするような宝物の数々に酔いしれてみてください。

※こちらでご紹介する書籍は地下1階のMMMライブラリにて閲覧いただけます。
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Update : 2019.6.3

『ウィーン美術工芸館』
19×15cm/60ページ
日本語/2014年
著者:サビーネ・ハーク
出版社:ウィーン美術史美術館
『ウィーン帝室宝物館』
19×15cm/87ページ
日本語/2016年
著者:サビーネ・ハーク
出版社:ウィーン美術史美術館
※この情報は2019年6月更新時のものです。

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