展覧会の中盤はカイユボット(Gustave Caillebotte/1848-1894)の作品が集められています。上流階級出身のカイユボットはほかの印象派の画家たちとは対照的に、経済的な不安を抱えずに画業に情熱を注ぐことのできた数少ない画家のひとりです。友人関係にあるほかの印象派の画家の絵画を購入するなど、カイユボットは印象派を支える重要な役割も果たしていました。本展ではカイユボットのプチ・ジュヌヴィリエの庭園を描いた作品や、パリを俯瞰した風景画を中心に展示。大型作品を複数点含む、とても見ごたえのあるセクションです。
カイユボットに続いて、この展覧会で焦点を当てられているのが「踊り子の画家」といわれるドガです。ドガの作品群を一望してまず気づくのが、ドガは風景画よりも人物画を好んで描いたという点。乗馬する人や身づくろいをする女性、そしてバレリーナなど、ドガの描く世界はほかの印象派の画家の作品とは一線を画しているのがわかります。またドガは油彩やパステル画だけでなく、版画や彫刻など、新しい表現方法にも情熱を見出しました。《14歳の小さな踊り子》のブロンズ像は、1881年の印象派展での出品作をもとに鋳造された作品。オルセーにも所蔵されている、ドガの彫刻作品の珠玉の一品です。
本展の最後のセクションで展示されているのは、1890年代以降の作品が中心です。1890年代といえば、印象派の画家たちがようやく世間に認められ始めた時代。画商のポール・デュラン=リュエルは、印象派の作品を、アメリカをはじめとした世界のコレクターに広め、その知名度と価値を高めることに大きな役割を果たしました。展示の最後に飾られているのは20世紀に入ってから描かれたモネの《水辺の忘れ草》とロンドンの夜を描いた《レスター・スクエア》の作品です。荒々しい筆触で描かれた両作品は、間近で見るとまるで抽象絵画のようでもあります。実際にこの時期のモネの作品は次世代のアメリカの抽象画家たちに大きな影響を与えたといいます。最終章の「印象派の向こう側」というタイトルにふさわしく、美術史の新たな1ページがめくられるのを暗示するように展覧会は締めくくられています。
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Update : 2014.4.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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