ドービニーのアトリエは、今も他人の手に渡ることなく、ドービニーの子孫によって保存され続けています。ドービニーの長女セシルの直系の子孫と結婚したマダム・ラスカン(Mme Raskin)が、アトリエの修復時や一般公開に至るまでのエピソードを語ってくださいました。
ドービニーの死後もこの住居兼アトリエは家族によって保存され続けています。主人はすでに亡くなっていますが、ドービニーの長女のセシルがその高祖母にあたりました。一般公開をする以前にこの建物を鑑定してもらった際には、たいへん高い価値があると評価されましたが、家族はこの建物を手放すことはありませんでした。
主人が高級家具師であったこともあり、この家の修復は主人の手によって行われました。アトリエのコローの壁画の手入れも、主人の手によるものです。修復前はたいへん暗かったこの壁画ですが、状態は決して悪くありませんでした。スポンジで洗浄した際には、それまで見えなかった小さな人影が現れたりもしました。洗浄後は色を加えたりすることはせず、艶消しのニスを塗って仕上げました。1983年から1990年にかけ、個人の手で修復を終えたその翌年、この建物は歴史的建造物に指定されました。必要以上の修復を加えていない、本来の姿のままのドービニーのアトリエが今もここに残されています。
オーヴェル=シュル=オワーズの観光局の2階部分にあるのが、ドービニーの名を冠したこの小さな美術館です。19世紀から20世紀にかけたオーヴェル=シュル=オワーズゆかりのアーティストの作品のほかに、素朴派の作品、現代作家の絵画や版画、さらに猫をモティーフにしたアート作品など、ユニークなコレクションを所蔵しています。ドービニーと息子のカールの作品が集められている常設展示の部屋では、油彩や版画作品以外にもドービニーが実際に使用していたパレットなど、貴重な画家の私物の数々も展示。ぜひドービニーのアトリエと併せて訪れたいスポットです。
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Update : 2014.8.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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