午前用スーツ、来客用アンサンブル、昼食用ワンピース、旅行用コートなど、時間や用途、場所、形によって、さまざまな名称がつけられたワードローブの数々。デイタイムワードローブを集めた展示では、当時の女性の着こなしの多様さと奥深さに触れることができます。素材や色、装飾以上に注意を引くのは、やはりそのシルエット。女性を最も美しく見せるラインを知り尽くしたパリのオートクチュールの芸術作品が並びます。
パリ市立モード美術館への収蔵時、ブランド名の表示がなかったこのスーツは、ディオールのアーカイブにより同社の1950年秋冬コレクションのモデルであることが判明しました。スーツの名称である《Bernique》は陣笠の形をした貝殻を意味するフランス語。ひだを打ちながらサイドに突き出した上着の裾のデザインが斬新です。体にフィットしたラインは1950年代のデザイナーのエスプリを最もよく表しています。
イブニングドレスはオートクチュールのメゾンにとって、その独創性や高級感を表現するのに重要な部門。当時ディオール、バレンシアガ、ファット、バルマンなど有名メゾンのコレクションの約1割がイブニングドレスで占められていました。タフタ、サテン、ベロアなど、さまざまな高級素材のドレスは時に彫刻を思わせる芸術的なフォルムを作り出しています。女性らしさが強調されるウエストやデコルテ部分の洗練されたラインにも注目です。
ジャク・ファットは左右非対称や大胆な一筆書きのデザイン、また力強く素早いはさみの動きによって独創的なフォルムのドレスを生み出しました。フォルムがクラシックであった場合は、色や素材によってその独創性が表現されました。この舞踏会用ドレスはその代表的な例。クラシックでエレガントなチュールのスカートに合わせたビスチェの刺繍には、なんとトウモロコシの粒を使用しています。穀物を宝石のように見せるその創造性にオートクチュールの真価を見せつけられます。
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Update : 2014.9.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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