洗練されればされるほど高級感を増したオートクチュールは、若い世代には時に堅苦しいものに映りました。そんな中で、ヴァカンス先で着用するために作られたカジュアルドレスは、オートクチュール界に軽快さと心地よい太陽のイメージをもたらしました。縞模様や花柄のプリント地、肌触りのよいコットン素材など、スーツやイブニングドレスとは一線を画したエレガンスが印象的です。こうした夏のカジュアルな装いは、1960年代のプレタポルテの躍進を促すきっかけにもなりました。
「本来プリント地からワンピースのアイデアを得るところ、エルメスはその逆をやってのけた」。そうコメントしたのは1952年発行の『ヴォーグ』誌フランス版です。まず布地にプリントを施し、その柄に従って布地を裁断、縫製するという、ユニークな手法で作られました。襟やボタン、ポケットの付いた街着に見せかけ、実際はVネックのプリント地のワンピースという遊び心の溢れる作品です。
カクテルドレスは、エレガンスと便利さを融合させたドレスのスタイル。夜8時以降のレストランでのディナーや観劇などで着用され、イブニングドレスよりも気軽に身に着けることのできるドレスとして1950年代に重宝されました。イブニングドレスよりも丈が短いのが特徴で、TPOに従い肩を隠すボレロやショールが合わせられました。1960年代には姿を消し、新たにクリエイターを引き付けたのは1980年代に入ってからのことでした。
1958年にスペイン出身のバレンシアガがパリで発表したのは、「ベビードール」という名のシンプルなフォルムのカクテルドレスでした。いわゆる「オーバーサイズ」のボリュームあるドレスのフォルムは、当時のモード界に衝撃を与えました。裾の豊かなプリーツは20年代の人形のドレスを彷彿とさせます。バレンシアガの独創的なデザインは、1960年代のトレンドとなる簡素化されたデザインに大きな影響を与えました。
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Update : 2014.9.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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