サン=ソヴール=アン=ピュイゼーの高台に建つ17世紀に再建された中世の城が、コレットに関する豊富な資料を所蔵しているコレット記念館です。すぐ隣にそびえるのは、16世紀に建てられた、珍しい楕円の形をした城砦の塔。町のシンボルであるこれらの建造物は、いずれもコレットの作品の中に登場しています。
記念館のエントランスへ入ると、床にはコレットが住んだ主な住所が刻まれ、壁にはサン=ソヴールの生家と最後の住まいであったパリのパレ・ロワイヤルの写真が飾られています。エントランスを抜け、展示室へと向かう途中、階段の吹き抜け部分で目に留まるのが、最上階の壁に映し出されているコレットのまなざしです。無垢な少女時代のまなざしから、皮肉を帯びた成熟女性のまなざしへと刻々と変化する映像が来館者の好奇心を掻き立てます。
階段を上がると、コレットの一生をテーマにしたひとつ目の展示室へとやってきます。四方の壁を覆い尽くしているのは、コレットが写し出されたモノクロ写真約250点。幼少期の家族写真から3人の配偶者との日々、愛犬や愛猫、ミュージック・ホールで共演した同性の愛人ミッシーなど、コレットの生涯を万遍なく振り返ることができる内容です。とりわけ目を引くのはナルシシズムを惜しげもなく表現したコレットの若かりし日の美貌。作家としてだけでなく女優としても活躍し、さらに華麗な恋愛エピソードの数々を残したことにも頷ける、妖艶な容姿が印象的です。
またジャン・コクトー(Jean Cocteau/1889-1963)をはじめとした同時代の文化人らとの交流も、コレットの生涯を語るのに欠かせない要素です。床にはコレットと親交のあった人物の名前が刻まれており、コクトー、ラヴェル(Maurice Ravel/1875-1937)、プルースト(Marcel Proust/1871-1922)など、20世紀のフランスを代表する芸術家の名前を見つけることができます。隣接の展示室には、コクトーによって描かれたコレットの肖像など、その親密な交友関係がうかがえる展示も行われています。
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Update : 2014.10.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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