フランスの北西、大西洋に面したロワール=アトランティック県は、フランス随一の塩の産地として知られています。ゲランド(Guérande)と、バ=シュル=メールの2市に属するバ=ゲランド塩田で収穫される天然塩は「ゲランドの塩」と呼ばれ、世界的に有名です。バ=シュル=メールにある塩田博物館では、1,000年以上の歴史を持つバ=ゲランドの塩田と、塩に携わる人々の伝統や文化を豊富なコレクションとともに紹介しています。
メスケール湾とバ=ゲランド湾のふたつの入江にまたがる1,800ヘクタールもの広大な塩田で収穫される塩が、世界に名高いゲランドの塩です。毎年6月から9月にかけて、年間平均1万トンの塩がこの地で生産されています。良質な天日塩を作るのに重要な条件は5つ。まず海沿いの立地であること、太陽がよく照ること、風が吹くこと、水はけのよい土地があること、そして卓越した製塩技術を持った職人がいること。ここゲランドでは、製塩に必要なこれらすべての条件が揃っています。
ゲランドでは機械化の波に飲まれることなく、伝統的な手作業で今も塩の収穫が行われています。機械を使わず丁寧に手作業で収穫された塩には、不純物が混ざりにくく、必要以上の洗浄がかけられたり、添加物が加えられたりすることがありません。ゲランドの塩がナチュラルで良質な塩として高い評判を得ているのには、こうした理由があるのです。塩の品質はもちろん、伝統的な天日による製塩技術、中世より変わることのない特別な塩田の風景が、現在もこの地で守り抜かれています。
バ=シュル=メールの塩田博物館の歴史は古く、19世紀にまで遡ります。博物館の前身であった「伝統衣装博物館」が塩商人の娘であったアデル・ピション(Adèle Pichon)によって創設されたのは1887年のこと。彼女は鉄道の開通による近代化とともに、伝統的で独特な田舎の文化が消えゆくのを危惧し、製塩に携わる地元の人々の伝統的な衣装や家具、装飾品、道具類を集め、民俗学をテーマとした博物館を開館しました。
この伝統衣装博物館に大きな転機が訪れたのは1970年代に入ってからのことでした。既存のコレクションに加えゲランドの製塩に関するコレクションを充実させ、1984年に塩田博物館として生まれ変わったのです。19世紀より始まったコレクションの数は、現在9,000点にも上っています。2013年のリニューアル後は、古い塩の倉庫を利用した800uのスペースに、約1,500点の展示品が陳列され、常設展および企画展が行われています。塩田に関する教育的な資料だけでなく、絵画や装飾品など、芸術的なコレクションも豊富に展示。1,000年以上前から地域に根ざしている製塩の技術と、製塩に携わる人々の文化を惜しげなく伝えています。
次ページでは、人類と塩の関わりからゲランドの塩の歴史まで、
塩田博物館の前半の展示内容をご紹介します。>>
Update : 2014.11.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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