ガイド付き見学の後は、2階のタブレットリー工芸のコレクションもぜひご覧ください。ここは自由に見学することができます。豊富な展示品の中でも見逃すことができないのは、美しい貝殻細工による扇のコレクションです。メリュはもちろん、タブレットリー工芸の盛んな地で作られた扇が展示室にずらりと並び、贅を尽くした世界が広がっています。貝殻特有の光沢と色合い、また手作業による細かい彫刻の美しさに思わず目を奪われます。
続く展示スペースは、テーマ別にタブレットリー工芸の背景を学べる内容となっています。貝殻やドミノをイメージした展示ケースは、引き出しや扉を開けながら展示を見ることのできる造り。子どもから大人まで好奇心を刺激しつつドミノなどのゲーム、扇、ボタンなど、自然の素材を使用したタブレットリーをさまざまな切り口で紹介しています。また戦後に主流となった人工の素材にもスポットを当て、伝統的なタブレットリーとの比較を試みています。
そして常設展示の終盤にあるのが、1903年創業のタブレットリーの工房を再現した展示です。骨や象牙を使った身だしなみ用品を製造するミネル家の工房は、1957年に閉鎖された後も操業時と変わらぬ状態で保たれていました。1996年にこの工房全体が地域に寄贈されたことで、美術館内に工房の大きさや機械の配置を忠実に模した空間が生まれました。当時の工房の様子が音声や光の演出とともに蘇り、来館者はメリュのタブレットリー工芸が盛んであった時代に思いを馳せることができます。
真珠貝・タブレットリー美術館は、19世紀から20世紀にかけて世界的規模で評価され、輝きを放ったメリュのタブレットリーの歴史の保存に努めています。当館の活動の核となっているのは、タブレットリーの歴史やその歴史を残した人々への敬意、また数々の証言の保存と代々受け継がれてきたノウハウの伝承です。それらは日本の伝統工芸の根本的価値と相通じるものがあります。日本とフランスは古くから深い関係にあり、とりわけ芸術の分野で結び付いています。真珠貝・タブレットリー美術館が、この友好関係を知らしめ、より強固なものにできることを嬉しく思います。
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Update : 2015.9.1 文・写真 : 増田葉子(Yoko Masuda)
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