今回の改装の目的は、建設当時の1732年の状態ではなく、ロダンがいた当時を再現することでした。開館以来100年近くが経っており、大がかりな修復が急務でした。ロダンがアトリエとして使っていた当時の資料と突き合わせて状態を分析し、最新技術を使って技術的な問題を解決しました。何度もツギハギの修復をしたためモザイクのようになっていた床は18世紀当時の床に復元し、状態が悪くなっていた床下の木の根太は鉄筋コンクリートに替えました。大きなガラス窓から入る、季節や時間帯で異なる光の量や強さに対応して、内部のLED照明をコンピュータで調節するようにしたことも大きな変化です。逆光対策もしています。このタイプの照明を使った美術館はロダン美術館が初めてということです。 作品を展示するガラスケースや、ブナ材を使った彫刻の台座は、シンプルで機能的なデザインになっています。
ロダン美術館の改修予算は1,600万ユーロと見積もられましたが、国の助成金を一切受けずに自前で改修が可能だったのは、メセナの援助があったからでした。ロダンの世界最大のコレクターでアメリカ人実業家のバーナード・ジェラルド・カントール(Bernard Gerald Cantor/1916-1996)は、アイリス夫人と1978年にアイリス&B.ジェラルド・カントール財団(Iris and B.Gerald Cantor Foundation)を設立し、ロダン作品を購入して美術館に寄付するなどの活動を行ってきました。その財団が改修費用を受け負いました。新装オープニングのスピーチで、代表のアイリス夫人は、「バーニー(カントールの愛称)と結婚するにはロダンが好きでなければならなかった」とユーモアを込めて語り、カントールの人生がいかにロダンと離れがたいものだったかをうかがわせました。
コンペで改装工事を勝ち取った建築事務所アトリエ・ド・リル(Atelier de l'ile)の建築家の一人、ドミニク・ブラール(Dominique Brard)さんは、微妙に違う展示室の色について、こう説明しています。
「壁一面に木彫り装飾のある部屋とない部屋があるため、次々と部屋を移動しても違和感がないよう、壁の色を絞りました。主色は、灰緑色「ブルーグレイ」と、ロダン美術館のために特別に調合された灰褐色「ビロングレイ」の2色です。主に1階にはビロングレイ、2階にはブルーグレイを使っています」。
Update : 2016.2.1 文・写真 : 羽生のり子(Noriko Hanyu)
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