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フラゴナール香水美術館マダムの連載の一部(10館)が本になりました。 バックナンバーを読む
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親愛なる日本の皆さまへ

人々で賑わうパリ・オペラ座界隈を歩いていると、思いがけずして素敵な場所に出会うことがあります。フラゴナール香水美術館もそのひとつ。数百メートル隔てた場所に建つ2軒の建物からなるミュゼで、ひとつはスクリーブ通り9番地の19世紀のオテル・パルティキュリエ(富豪の邸宅)に、もうひとつはキャプシーヌ大通り39番地の旧キャプシーヌ劇場にあります。どちらも入館料無料ですが、香水の世界をより一層ご理解いただくためには、ぜひ双方のガイド付きツアー(日本語もあります)にご参加なさることをおすすめいたします。

スクリーブ通りのフラゴナール香水美術館は、「オテル・パルティキュリエ」と呼ばれる建物にあります。1860年、オペラ座を設計したガルニエの弟子の手による建築で、板張り装飾や化粧漆喰、壁画など当時の素晴らしい室内装飾が丁寧に修復され、保存されています。この空間に1983年以来展示されているのが、香水の歴史に関わる品々。南仏の老舗「パフュームリー・フラゴナール(フラゴナール香水製造販売会社)」の創業者であるユジェーヌ・フックの孫、ジャン=フランソワ・コスタが1970年から収集を始めた素晴らしいコレクションです。

香水の世界に魅了されたフックは、1926年、16世紀以来のフランスにおける香水のメッカ、コート・ダジュールのグラースにパフュームリー・フラゴナールを設立しました。フラゴナールという社名は、グラース生まれの画家で、父親が宮廷で手袋と香水係の長を務めていたというジャン=オノレ・フラゴナール(1732-1806)にちなんだものでした。パフュームリー・フラゴナールを現在、受け継ぐのは四代目。ジャン=フランソワ・コスタの3人の息子が、製品の開発に当たっています。

それではまず、オテル・パルティキュリエの2階から、香水の世界を覗いてみることといたしましょう。ここでは、古代から現代まで、3000年に及ぶ香水の歴史をたどることができます。最初の展示室には、「香水の来た道」を示す大きな地図が展示されています。ジャスミンやオレンジの花はフランス南部、ジンジャーは日本、というようにさまざまな地域に産する固有の植物が、香水の原料となってきたことが分かります。そして、20から250種の異なるエッセンスを組み合わせて、ひとつの香水が作られるのです。
展示室にはボイラー、蒸留器(蒸留器を意味するアランビックという語はアラビア語で壺を意味します)といった品々が並び、グラースのフラゴナール社の工場で19世紀に行われていた、花のエッセンスを抽出し蒸留するさまざまな方法を今に伝えています。最も古い方法は、エジプト人が発明した浸出法。予め熱した脂肪に花を浸し、その後、アルコールと混ぜて液体にします。ジャスミンの精油を1リットル抽出するのに、どのくらいの花が必要かご存知ですか? なんと600kgもの花が必要です!

もっとも、こうしたコストのかかる方法は現在では使われていません。一方、バラ、オレンジの花、ラベンターに今でも用いられているのが、蒸留という方法です。沸騰した水の入った蒸留器の上部に穴のあいたプレートを置き、その上に花または植物を並べ、蒸気に植物のエッセンスを吸収させます。暖炉の上にはふたつの壺「ポプリ」(18世紀、ニデルヴィレ)が置かれていますが、現代の「ポプリ」という呼び名は香りの良い木の皮や小さな花をここに入れたことに由来しています。

Update : 2015.4.1

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