最後の展示室では、400本のガラスの小瓶が置かれた19世紀の「調香師のオルガン」が目を引きます。「ネ(鼻)」と呼ばれる調香師は、こうした小瓶の香料を組み合わせて香水を調合します。通常は最も軽いトップノート、比較的早く香るミドルノート、肌に残るラストノートの3つで構成します。調香師は「オルガン」の後ろに座り、細い紙にしみ込ませた何百種類もの香りを記憶することができます。今日では、調香師の仕事のあり方もだいぶ変わり、化学に精通し、市場の制約も非常によく理解して、100以上の小瓶を巧みに操ることができる存在となりました。
ショップを取り抜けたら、2つ目のフラゴナール香水美術館に行くこともお忘れなく。とても魅力的な旧キャプシーヌ劇場のなかにあります。1894年に建築されたこの建物は、キャプシーヌ大通りの喧噪から離れ、小道の奥にひっそりとたたずんでいます。バルコニー席を使った居心地の良い小さな展示室は、その丸みを帯びた形にぴったり合う形をしていて、独創的な空間になっています。
ここでは、蒸留器や濃縮器、ボイラー、ストック用タンクのミニチュアを展示して香水工場を再現しています。たくさんの広口瓶にあらゆる種類のドライフラワー(バラ、アイリスの根、カモミール、シキミなど)が入っています。階段の上には、「香水製造の歴史」をテーマにした大きなフレスコ画(ヴァロリス、20世紀初頭)があり、それぞれの時代の衣裳を身につけた女性が香水瓶を持って描かれています。アレクシ=ジョゼフ・ペリニョン(1806-1882)作の絵画が何点かあり、宝石で着飾ったおしゃれな女性が登場する面白い場面を描いています。きれいな展示ケースには、古代から現代までの貴重な小瓶が時代順に展示されています。中央の展示ケースには、灰色の花崗岩と斑岩、金メッキしたブロンズでできた豪華な香炉(1780年頃、ピエール・グティエール作)が2点展示されています。香炉は香りによる雰囲気作りに使われていました。それから、19世紀の変わった形の香水瓶入れ《香水の四輪馬車》もあります。金メッキした真鍮とブロンズ製で、香水瓶を入れるのに屋根が開くようになっています。ゲランの「ミツコ」(1919年)のクリスタル製の瓶や、フラゴナールの「夜の美女」(1946年)の瓶など、クリエーターの香水瓶もご覧ください。「夜の美女」は、バラとスミレをベースにした香水で、1990年と2001年に新しい瓶で再販され、定番となりました。順路の最後にはやはり「調香師のオルガン」が置かれています。
美術館の装飾は、フラゴナールもその一部を成す香水の歴史のように、フランス的に洗練されたもの。フラゴナールの香水に心惹かれたならば、皆様もわたくしのように、フラゴナールのショップでお買い物をする誘惑に身を任せてみてはいかがでしょうか。
友情を込めて。
Update : 2015.4.1
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