7月から9月にかけて、フランスはヴァカンス・シーズンとなります。そこで、今月は夏休みに家族連れで訪れるのにぴったりの場所を紹介します。フランス中部の町アンボワーズ(Amboise)にあるクロ・リュセ城(Château du Clos Lucé)。イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci/1452‐1519)の終焉の地です。生前に暮らした城のほか、その天才的な創造の源を探るカルチャーパークもあり、大人から子どもまで楽しめる美術スポットです。
15世紀よりフランス歴代の国王が居住したという由緒を誇る町アンボワーズ。小高い岩山の上からロワール渓谷を望むアンボワーズ城は、この町のシンボルとして古くから親しまれています。この城の敷地内のチャペルには“世界で最も有名な芸術家”が眠っています。イタリア・ルネサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチです。アンボワーズはレオナルドが最晩年を過ごした町として知られており、アンボワーズ城から400メートルほど離れた場所にはレオナルド最後の家、クロ・リュセ城が今も当時のままの姿で残されています。
赤レンガの外観が美しいクロ・リュセ城は、1471年に国王ルイ11世(Louis XI/1423‐1483)のお抱え料理人エティエンヌ・ル・ルー(Etienne Le Loup)のために建てられた城でした。その後、1490年に国王シャルル8世(Charles VIII/1470‐1498)によって買い取られると、以降、200年間にわたってこの城は王家の所有となります。
クロ・リュセ城にレオナルドがやってきたのは、1516年のこと。当時の国王フランソワ1世(François I/1494‐1547)の招きに応えてのことでした。その荷物には、後にルーヴル美術館の至宝となる《モナリザ》《聖アンナと聖母子》《洗礼者聖ヨハネ》の3作品がありました。
「ここで考えるのも、夢想するのも、働くのもあなたの自由だ」、フランソワ1世にこう告げられたレオナルドは、国王の手厚い庇護のもと、1516年から1519年に亡くなるまでの3年間をこの城で過ごしました。イタリア戦争のただ中に王位についたフランソワ1世は、イタリア・ルネサンスの美に魅了され、1515年にミラノを占領してスフォルツァ(Sforza)家を追放すると、スフォルツァ家に仕えていたレオナルドをフランスに呼び寄せたのです。そして、愛弟子のフランチェスコ・メルツィ(Francesco Melzi/1493‐1570頃)とともにフランスを訪れたレオナルドは、700エキュ(フランス革命前までのフランスの通貨単位)の年金を受け取りながらクロ・リュセ城に暮らし、未完の絵画に手を入れつつさまざまな技術の発明に情熱を傾けるかたわら、手の込んだ演出の祭典を企画してフランソワ1世を筆頭とする来客を大いに楽しませたといいます。
レオナルドの死から時を経た17世紀、城は王家からアンボワーズ家に受け継がれ、さらに19世紀中頃に現在の所有者であるサン・ブリ(Saint Bris)家の手に渡りました。こうした歴史の中で、当初「クルー城(le Manoir du Cloux)」と呼ばれていた城は、17世紀中頃に「クロ・リュセ」という名称で呼ばれるようになりました。レオナルドが暮らしていた当時のルネサンス様式も一時は失われたものの、1960年代からの30年間にもおよぶ改修工事を経て蘇り、現在では、アンボワーズにおけるレオナルドの軌跡をたどることができる貴重な場所として、多くの来館者を迎えています。

- 所在地
2 rue du Clos Lucé - 37400 Amboise - Val de Loire - Tel
+33(0)2 47 57 00 73 - Fax
+33(0)2 47 57 62 88 - URL
http://www.vinci-closluce.com/ - 開館時間
1月:10:00-18:00
2〜6月:9:00-19:00
7〜8月:9:00-20:00
9〜10月:9:00-19:00
11〜12月:9:00-18:00
*「レオナルド・ダ・ヴィンチの庭園」はハイシーズンのみ公開(4月15日〜11月15日) - 休館日
1月1日、12月25日 - 入館料
〈3月1日〜11月15日〉
一般:13ユーロ
6〜18歳:8ユーロ
〈11月16日〜2月28日〉
一般:10ユーロ
6〜18歳:7.5ユーロ - アクセス
パリAusterlitz駅から直通電車で2時間、Amboise駅下車。またはパリMontparnasse駅からSt Pierre des Corps駅までTGVで1時間、St Pierre des Corps駅で乗り換え、Amboise駅下車
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