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ランビネ美術館 Musée Lambinet バックナンバーを読む
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▲夫人の寝室
©A. de Montalembert

お隣は夫人の寝室。とても洗練された空間です。ここには、1780年頃に作られたギヨーム・ケンプの焼き印入りの珍しい小箪笥があります。9段もの引き出しを備え(これは当時としては斬新な構造でした)、白い花のモチーフで美しく装飾されたこの箪笥には、たくさんの衣類をしまうことができます。そして、マルタン・ニスで仕上げられたフォルテピアノや、竪琴のモチーフがあしらわれたルイ16世(在位1774-1792)時代の4脚の椅子が、音楽が当時の上流婦人のたしなみであったことを物語っています。ベッドの後ろには、小物入れの付いた、かわいらしい小テーブルがあります。ふたつの引き出しは、アマランサスとレモンの木で上貼りされています。美しい小型家具で知られる著名な高級家具職人シャルル・トピノによる、1780年頃の作品です。


▲金色のサロン
©Mairie de Versailles

この邸宅の中で最も豪華な部屋は、「金色のサロン」でしょう。金箔を貼った化粧漆喰がルイ15世時代のままに残された部屋で、肘掛け椅子6脚とソファ、光沢のある金色の絹で覆われた暖炉の火よけからなる、王の家具管理局の重要な家具職人のひとりジャン・バティスト・スネ(1748-1803)の焼き印が押された家具一式が、ひとつとして欠けることなく完全にそろっています(これは珍しいことです)。ここは、館の主とその妻がハープを囲む音楽会などの際に、客人を迎えたサロンでした。優美なハープは、王妃マリー=アントワネット(1755-1793)の家具職人だったJ.H.ネデルマン(1735-1799)が彫刻などの装飾を手がけたものです。

隣には、主の書斎があります。おそらくここも、王の建物管理局の建築家によるものでしょう。床に敷かれたレンガが、その存在を暗示しています。この部屋にある肘掛け椅子のスタイルは、ルイ15世時代からルイ16世時代への移行期ならでは。美しい曲線を描く脚と肘掛けはルイ15世時代、シンプルなラインの背もたれはルイ16世時代の様式です。非常にユニークな書物机は、1750年頃のもので、3つの焼き印が押されているのが特徴です。そのうちのひとつは、ラクロワの名で知られるかの有名な高級家具職人ロジェ・ヴァンデルクリューズ(1728-1799)のものです。垂れ板と扉、両脇に花かごの装飾があり、いかにもルイ15世時代らしいスタイルといえましょう。木材の天然色を活かした部分もあれば、木に彩色をしたり彫刻を施したり、琥珀色に染めた部分もありますが、寄せ木細工と化粧板の仕上げはとりわけ見事です。


▲オーギュスタン・パジュー 《ルイ16世》 18世紀
©RMN / Agence Bulloz

18世紀ヴェルサイユに暮らしたブルジョワジーの華麗な世界を楽しまれた後は、この美術館が誇る美術コレクションをご堪能くださいね。ここにはすばらしい彫刻コレクションがあるのです。1階右手にある最初の展示室に入ると、ふたつの窓の間に置かれた盛装したルイ16世の胸像が出迎えてくれるでしょう。これはオーギュスタン・パジュー(1730-1809)の手によるもので、王の公式な肖像のひとつでした。そして、この展示室そのものは、ヴェルサイユ出身の著名な彫刻家ジャン=アントワーヌ・ウードン(1741-1828)の作品にあてられています。中央には、ウードンの作品で最もよく知られた《狩りの女神ディアナ》が置かれています。ここにあるものは、テラコッタ風に作った縮小版の石膏像で、ウードンの印が入っています。なんとシンプルで優美な像でしょう。サビーヌ・ウードンの胸像も魅力的な作品でした。モデルとなったのは、当時4歳のウードンの娘です。肩にかかる繊細な巻き毛で縁取られた顔、そのみずみずしく、自然な表情──。わたくしは強い感銘を受けずにはいられませんでした。古代風のドレーパリーが施された、有名な石膏像《ヴォルテール座像》(3ページ目)は、晩年の哲学者をモデルにしたものです。鬘を付けず、やつれた顔を見せるこの老哲学者像のリアリズムは非常に印象的です。


▲ジャン=アントワーヌ・ウードン 《狩りの女神ディアナ》 1790年
©Musée Lambinet

▲ジャン=アントワーヌ・ウードン 《サビーヌ・ウードン(1787-1836)、彫刻家の娘、4歳》 1791年
©RMN / Gérard Blot

▲ジャン=アントワーヌ・ウードン 《ヴォルテール座像》 1778年
©A. de Montalembert

▲アダム・フランス・ファン・デル・メーレン派 《1668年のヴェルサイユ宮殿 ルイ14世と近衛騎兵の一団》 17世紀
©RMN / Jean Popovitch

3階では、1789年のフランス革命前後のヴェルサイユ市の歴史に関する展示をご覧いただけます。この美術館が所蔵するアンシャン・レジーム期の町と城を描いた、とても興味深い作品もあります。最も古い作品のひとつは、アダム・フランス・ファン・デル・メーレン(1632-1690)派の《1668年のヴェルサイユ宮殿 ルイ14世と近衛騎兵の一団》です。この作品を見ると、当時のヴェルサイユ宮殿がルイ13世(在位1610-1643)から受け継がれた狩猟の館にすぎず、まだ庭園も造られていなかったことが分かります。展示ケースには、ルイ16世時代の宮殿と庭園を表した非常に繊細な18のミニアチュール(細密画)が展示されています。実は、これらは貴重なフロックコートのボタンなのです。革命以前のヴェルサイユを紹介する最後の部屋には、1785年から1790年にかけてナントの工房で作られた、とても興味深い銅版が展示されています。これは、かの有名なプリント生地「トワル・ド・ジュイ」の印刷に使われたものです。


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