ボルドーから内陸部へ約35km、ぶどう畑に四方を囲まれた高台にサン=テミリオンの村があります。村の建物のほとんどが石造りで、緑の畑、青い空と美しいコントラストをなしています。サン=テミリオンは1999年に近くの7つの村と共にユネスコ世界遺産に登録されました。中世の面影が残る村、そして周囲のぶどう畑をも含んだ環境に対する認定です。
もともとサン=テミリオンは、8世紀にフランス北西部のブルターニュ(Bretagne)からやって来た聖人エミリオン(Saint Émilion)が庵を開いたことが村の起源とされています。この村は大きな岩盤の上につくられ、民家などの建材は地下から掘り出した石灰石です。村の下には200kmにもわたる石切り場跡が縦横無尽に走っています。その一部には1枚岩をくり抜いて造られたモノリス教会やカタコンベなどがあり、中世には巡礼者も訪れる聖地となりました。
ルイ14世(LouisXIV)が「神のネクター」と呼んだ素晴らしい赤ワインの生産地として知られ、特級のメゾンも集中しています。またこの地には中世から続くワインの伝統儀式、ラ・ジュラードが今も残っています。ワインの品質を管理するために選ばれたジュラと呼ばれるメンバーが、6月に新しいワインの判断を行い、9月にはぶどうの収穫を宣言するのです。革命後にこの儀式は一度廃れましたが、1948年に再開されました。ジュラたちは赤と白の正装で王の塔に上り、町中を練り歩きます。6月のセレモニーには主賓であるモナコのアルベール王子をはじめ、世界から400人もの招待客を招き、村にある参事会聖堂の中庭に宴が繰り広げられました。このシンボリックな伝統行事は世界中に紹介され、サン=テミリオンの知名度を上げる役割を果たしています。
▲今年の主賓はモナコのアルベール王子だった。 | ▲晩餐に向かうジュラたち。 |
▲新しいワインの発表。 ©Anne Lanta/Agence Heurisko |
▲サン=テミリオンのジュラード式典 ©Anne Lanta/Agence Heurisko |
この時期にはサン=テミリオンの村全体もお祭りとなります。ワインのサロンやコンサート、また愛好家が参加するアートの展覧会などが開催され、村中が賑わいます。爽やかな6月の気候、見わたす限りの緑、美しい村、そしておいしいワインと、この時期のサン=テミリオンでは至福の時間を過ごすことができるでしょう。
▲お祭りの際に開かれたアートの展覧会。 | ▲ワインのサロン。グラスを2ユーロで購入すれば、すべてデギュスタシオン(試飲)できる。 |
- ボルドーの北東約35km、ドルドーニュ川右岸に位置するサン=テミリオンへは、ボルドーから列車で約1時間。この地のワインの味は、中世の頃、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへ向かう巡礼者の間で人気となり、その名が広まった。ジロンド川左岸のメドック地区と並ぶボルドーの赤ワインの産地。
- サン=テミリオン観光局
http://www.saint-emilion-tourisme.com/
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