
ドガ展にあわせて来日された、オルセー美術館学芸員のフィリップ・ソニエ氏。9月17日のオープニング当日の記者会見後、MMFは特別にソニエ氏に少しお時間をいたき、インタヴューをさせていただけることになりました。

「《エトワール》や《バレエレッスン》などのメジャー作以外に、少し地味だけれど見逃せない作品を教えていただけますか」というMMFの質問に、「絵画はどれをとってもとにかく素晴らしいので、選ぶのも容易ではありませんが…」と前置きをしたうえで、MMFwebサイトをご覧の皆様のために、ソニエ氏が“隠れた名作”を選び、解説してくださいました!


ポー美術館が所蔵する名作のひとつといえるでしょう。この作品が素晴らしいのは、集団肖像画でありながら、人物ひとりひとりが肖像画としても成立しているところです。最前景の老人にご注目ください。まるで、北方ルネサンス期の作品に登場する人物のようです。この作品に見られるドガの描写の正確さ、思慮深さや精密さはクエンティン・マセイス(Quentin Metsys)やヤン・ファン・エイク(Jan van Eyck)に通じるものがあります。また、画面の側面から綿を照らし出す光の効果などは、フェルメール(Johannes Vermeer)を彷彿させます。さらに、集団肖像画を多く描いたファンタン=ラトゥール(Henri Fantin-Latour)の作風とドガの作品を比べて見ると、ラトゥールは人物ひとりひとりがじっとして型どおりのポーズを取っていますが、ドガの作品では人物はそれぞれの作業に夢中で、まるで画家の存在など無視しているかのようです。


© RMN(Musée d'Orsay)/Hervé Lewandowski/distributed by AMF-DNPartcom
<湯浴みする女>という主題は、ドガが同時代の芸術に革新をもたらした新しいテーマのひとつです。<スザンヌの沐浴>という古典的なテーマを同時代の女性に置き換えています。彼女たちは裸でうずくまり、足やうなじを拭うのに没頭し、身体つきや皺、肉付きのよさ、つまり、その不完全さを隠していないのです。また、遠景と近景を隣同士に並べて描く手法は、日本の浮世絵の影響です。


彫刻作品で言えば、やはり、チューリッヒのE.G.ビューレー・コレクションから来たこの作品。唯一、ドガが生前展示した彫刻ということで、やはり注目してほしいです。
実は、MMFでは以前、ソニエ氏がオランジュリー美術館の学芸員だった当時にもインタヴューをしたことがありました。今回も、オープニング当日のお忙しいスケジュールにも関わらず、予定時間をオーバーしてお話しいただけました。上記のお話し以外にも、デリケートなパステル画を輸送する際には衝撃を和らげるため、箱の中にまた別の箱を入れるといった特別な工夫がなされたことなど、展覧会の舞台裏のお話もお伺いできました。

MMFwebサイトをご覧の皆さまへ、ぜひ展覧会にお出かけください、大勢の方のお越しをお待ちしています!
フィリップ・ソニエ
2010年9月17日
- 会期
2010年9月18日(土)〜12月31日(金) - 会場
横浜美術館 - 所在地
横浜市西区みなとみらい3-4-1 - Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル) - URL
美術館
http://www.yaf.or.jp/yma/
- 開館時間
10:00-18:00
金曜日は20:00まで
*入館は閉館の30分前まで - 休館日
木曜日
*ただし9/23、12/23、12/30は開館 - 入館料
一般:1500円
高校・大学生:1200円
中学生:600円
小学生以下:無料
*毎週土曜日は高校生以下無料
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。