19世紀、近代都市パリの情景を、客観的な視点で描き出したエドガー・ドガ(1834-1917)。
<踊り子の画家>として日本でも人気の高いドガは、印象派グループの中心的存在として君臨し、同時代の芸術に数多くの革新をもたらした画家でした。
現在、横浜美術館では、オルセー美術館の全面的な協力のもと、国内では実に21年ぶりに実現したドガの大回顧展が開催中です。オルセー所蔵の45作品を中心に、国内外のコレクションから集められたドガの名品120点が一堂に会します。
展覧会の監修を務めたオルセー美術館の学芸員フィリップ・ソニエ氏が、今回のドガ展の見どころを語ってくださいました。

今回の展覧会はドガの芸術に正当性を与える、非常に重要な展覧会です。皆さまご存じのように、ドガは才能に溢れる世界的な巨匠です。その魅力的な作品には力があり、生き生きとした構図で、世界の捉え方を示してくれます。しかし、ドガのこうした特性は、ほとんどの印象派の画家たちがそうであったように、偶発的な結果ではありません。よくある誤解がありますが、ドガはもっとも理解されていない画家のひとりではないでしょうか。
今回の展覧会が、この誤解を解いてくれることを期待しています。私たちはドガの特徴である、<努力と根気>に焦点を当てようと考えました。
ポスターにも使われている《エトワール》という作品ですが、この作品は確かに魅力的です。素晴らしい作品で、軽やかさがあります。しかし、<踊り>という主題に騙されてはいけません。軽やかさや柔らかさは、簡単なものではないのです。皆さまはもうご存じかと思いますが、軽やかさというのは、一所懸命に訓練して、練習することによって得られるものなのです。これがドガに関して重要かつ忘れられがちなポイントです。ドガがダンスに興味を持ったのは、ダンスとドガの作品にひとつの共通点があるからなのです。それは、<毎日、研鑽を積む>ということです。
もうひとつ強調したかったのは、ドガの<探究心>です。ドガの努力は恒常的な不満に発したものでした。しかし、この不満が不毛に陥ることはなく、逆に、多様なテクニックを用いるという結果に繋がるのです。
この展覧会では、写真、たくさんの彫刻、版画などを展示することにしました。こうして観客は、いろいろな模索をする秘密のドガの研究室、あるいは楽屋裏に入ることができるのです。
最後の重要なポイントは<真実、現実>という点です。ある日、ドガは「私は想像力に乏しい」と告白したことがあります。少し意外な言葉ですが、非常に深い意味があります。確かにドガは現実から切り離された絵画を考えることはとても苦手でした。だから想像上の物語、あるいは幻想などには興味を持ちませんでした。それよりも現実的なテーマを好んだのです。なぜなら、現実はもっと柔軟で批判しようがないものだったからです。
というわけで、ドガにとって非常に重要であった<肖像画>のセクションを設けました。最後に彫刻を展示してありますが、この小さな彫刻群をご覧いただけますと、ドガにとって、真実の探求がいかに重要だったかということが、お分かりいただけると思います。
- 会期
2010年9月18日(土)〜12月31日(金) - 会場
横浜美術館 - 所在地
横浜市西区みなとみらい3-4-1 - Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル) - URL
美術館
http://www.yaf.or.jp/yma/
- 開館時間
10:00-18:00
金曜日は20:00まで
*入館は閉館の30分前まで - 休館日
木曜日
*ただし9/23、12/23、12/30は開館 - 入館料
一般:1500円
高校・大学生:1200円
中学生:600円
小学生以下:無料
*毎週土曜日は高校生以下無料
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。