版画美術館では、17世紀から現在に至るまで、さまざまな地域から収集されたコレクションの展示を行っています。地元エピナルの伝統産業を見直すだけでなく、版画の歴史や概念、またその役割を、地域を問わない豊富な版画のコレクションを通して紹介しています。展示は保存上の理由から、6カ月ごとにリニューアルされるため、常設展示であっても、訪れるたびに新たな版画作品を発見できるというのがこの博物館の魅力でもあります。
コレクションはフランス国内のものはもちろん、ヨーロッパ、そしてインドや日本など、アジアにまで及ぶ充実した内容を誇っています。2010年の6月にはアンリ・ジョルジュ(Henri George)氏のプライヴェートコレクションの購入で、8万5,000点が新たに博物館のコレクションに加わり、収蔵点数は3倍に跳ね上がりました。現在の総コレクション数は、実に10万点以上にものぼります。
さらに博物館では現代作家の作品の収集にも力を入れています。開館以来、現代の作品と過去の作品を照らし合わせ、比較するというのがこの博物館のコンセプトであり、常設展示には博物館から注文を受けて制作された、版画をイメージさせる現代の写真作品が各所に展示されています。「イメージ」の解釈という共通のテーマの下、異なる媒体のアートが、互いにその関係を導き出し、そして問いを投げかけ合うという独創的な展示内容です。
これまで見てきたように、版画は人々に「イメージ」を浸透させるのに重要な役割を担ってきました。そしてそれは政治的側面だけにとどまらず、芸術作品の普及にも役立ってきました。例えばイタリア・ルネサンスの巨匠のひとり、ラファエロ(Raffaello Sanzio)の≪悪鬼を退治する聖ミカエル≫という作品は、古くから版画のモチーフとして頻繁に用いられ、行商人によって各地で売られることで人々の間に広く浸透しました。広告や風刺画に頻繁に使用されるなど、フランスでこの絵画作品がポピュラーである理由は、元を辿れば19世紀に普及した版画がきっかけであったと言っても過言ではありません。
また、常設展で注目したいのが、子どもの教育をテーマとした展示です。展示品からも分かるように、子どものための版画は、教育を目的としたものであっても、遊びの要素が多く含まれているのが特徴です。とりわけ切り取り式の版画から実際に作られた模型は、大人でも楽しめるほど凝ったもので、細部までとてもよくできているのが印象的です。
こうした版画は、当時流行の乗り物や他国の事物をモチーフとするなど、常にその時代の関心を反映しています。当時の風俗や人々の関心を色濃く映し出す版画作品。作品自体はもちろん、それぞれの時代背景に思いを馳せながら鑑賞していくのが、この博物館ならではの醍醐味でもあります。
現在版画美術館で行われている「コニヴァンス♯1」という企画展は、現代の写真家の風景作品とインドの1950年代の子ども向けの版画作品を照らし合わせるという、オリジナリティ溢れる展覧会です。こうした試みは今回が初めてですが、今後も「イメージ」を対峙させる展覧会が第2弾、第3弾と続く予定です。

© Musée de l'Image, cliché H. Rouyer
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- 所在地
42 bis quai de Dogneville 88000 Épinal - Tel
+33(0)3 29 81 48 30 - Fax
+33(0)3 29 81 48 31 - E-mail
musee.image@epinal.fr - URL
http://www.museedelimage.fr/ - 開館時間
<9月1日〜6月30日>
9:30-12:00、14:00-18:00
*金曜日は9:30-18:00、日曜日・祝日は10:00-12:00、14:00-18:00
<7月1日〜8月31日>
10:00-12:30、13:30-18:00
*金曜日は10:00-18:00 - 休館日
月曜日午前、1月1日、12月25日
その他祝日は電話で要確認 - 入館料
一般:5ユーロ
割引料金:3.5ユーロ
18歳以下:1ユーロ
6歳以下:無料
<イマージュリー・デピナルとの共通券>
一般:8ユーロ
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