日本語 Francais
ジャン=リュック・モンテロッソ館長へのインタビュー パリ写真月間展覧会カレンダー ヨーロッパ写真館
  ヨーロッパ写真館館長・パリ写真月間運営委員長 ジャン=リュック・モンテロッソ館長へのインタビュー
2年に1度、偶数年の11月、パリのアートシーンで最も注目されるイベントといえば「Mois de la Photo à Paris (パリ写真月間)」。
市内の美術館やギャラリーなど、およそ70〜80ヵ所でさまざまな写真展が開かれ、写真に関する講演会や上映会も行われます。
今年で14回目を迎えるこの国際的な写真イベント開催のいきさつ、
そして「印刷されたページ」をテーマとした今年の写真月間の見どころを、
運営委員長を務めるヨーロッパ写真館館長ジャン=リュック・モンテロッソ氏にお伺いしました。
 
写真を単なる資料から美術作品へシフトさせる──パリを写真の中心都市へと変貌させた「パリ写真月間」の始まり
▲ジャン=リュック・モンテロッソ氏
MMF:1980年に初めて「パリ写真月間」を開催するに至ったいきさつや、当時の状況についてお話いただけますか?
モンテロッソ氏(以下JLM):国際的な写真シーンで、再びパリに中心的な役割を演じてほしかったのです。当時はフランスにおける写真制作の現場は無気力状態から脱し始めたところでしたので、そうした状況も味方してくれました。パリ市長の支援のもと、私が中心となり人々のエネルギーと能力を結集することができました。このイベントを起点に物事を動かそうという共通の意志、そして写真を単なる資料から美術作品へとシフトさせようという意欲によって写真月間は成功を収めたのだと思います。
     
MMF:写真月間をパリで行うということは、あなたにとって特別な意味があったのですか?そして、今現在はどう思われますか。
JLM:パリは素晴らしい街ですので、ここで文化行事を主催することができるということに対しては、常に大きな喜びを感じます。また、『Paris Photo(パリ写真フェア)』の創設によって、さらなる相乗効果も生まれました。写真月間を広く一般の人々を対象とした文化事業と捉えるならば、写真フェアは世界中の写真家や学芸員、ギャラリスト、収集家を惹きつけるものといえるでしょう。
▲ギャルリー・マデで開催される展覧会『アン=リーズ・ボワイエとニコラ・コマン―フェイディングFading』より。
Exposition Fading la Galerie Mad Anne-Lise Broyer & Nicolas Comment, Fading, 2006
 
ページトップへ
 
* Paris Photo(パリ写真フェア)
1997年に創設され、今年で第10回を数える国際写真フェアで、世界各国から集められた19世紀から近現代までの写真芸術の名作を数々の展覧会を通じて紹介。写真シーンの最新動向を探ることのできる機会として、毎年、数多くのカメラマンや研究者、出版関係者、コレクターなどが訪れている。ひとつの国や地域を取り上げる「Statement」セクションもあり、今年は北欧諸国の写真にスポットが当てられている。
デジタル化が進む現代の写真シーン──「印刷されたページ」の魅力に迫る今年の「パリ写真月間」
▲ヨーロッパ写真館で開催される展覧会『VUをめぐって:1928-1940年の写真誌』より。
Exposition Regarder VU: magazine photographique 1928-1940 la MEP
Photomontage de couverture par Marcel Ichac, n259, 1er mars 1933
MMF:パリ写真月間は今年で14回目を迎えましたが、この文化事業を始めたことによって、主催者、観客、写真家、コレクターにとって、何が一番変化したと思われますか。
JLM:1980年の写真月間で成功した20才の若者は、現在では50才近くになっています。つまり、2006年の第14回写真月間は、第一世代の子供や、孫を迎えることになるのです。この25年で写真の世界が完全に変わったのは言うまでもありません。写真がコレクションの対象になっただけでなく、デジタル技術の進歩のおかげで、写真はこれまでになく大きな変化を経験しました。従来の表現形式はまだ機能していますが、写真にはテクノロジーの進化や変化に適応する柔軟さがあります。そして、一般の人々が質の高い写真作品と出会える機会を提供するというこの企画の本質的な目的が原動力となっているのです。
     
MMF:今日の写真展の企画の仕方は25年前と変わっていませんか?
JLM:もちろん変わりました。今日では、物事はずっと複雑になっています。作品の商品的価値も含めて。例えば次のような逸話があります。1980年、パリ市(Henri Cartier-Bresson)近代美術館で、アンリ・カルティエ=ブレッソンの大規模な回顧展を開きました。展覧会開幕の1ヵ月後、ブレッソンは自分の気に入る写真が出来たので、不意に美術館にやってきて、釘と金槌をもらい、新しい作品を展覧会場に追加していったのです。今日ではそんなことは考えられませんね。
▲ギャルリー・ボドワン・レボンで開催される展覧会『ジャンルー・シーフ、バザー誌の時代、1961-1966年ニューヨーク』より。
Exposition Jeanloup Sieff, les années bazaar, New york 1961-1966 la Galerie Baudoin Lebon
Jeanloup Sieff, Alfred Hitchcock posant avec Ina, Hollywood, 1962
     
MMF:写真月間の実行委員長という役割は、ヨーロッパ写真館(MEP)の館長とどのような点で関わっていますか?「写真月間」という企画と「ヨーロッパ写真館」という施設とはどのように繋がっているのですか?
JLM:歴史的な理由から、写真月間は、現在ヨーロッパ写真館を管理している協会が中心になって企画されました。第1回写真月間に参加したスタッフたちは、ヨーロッパ写真館の運営に関わっている人たちだったのです。そうした意味で、写真月間とヨーロッパ写真館には繋がりがあるといえますね。
 
MMF:2006年の写真月間の中心テーマ「印刷されたページ」について説明していただけますか?
JLM:大まかにいって1920年から1980年までの60年間、写真は本や雑誌の印刷されたページを通じて普及してきました。例えばドン・マッカリン(Don MacCullin)のようなフォト・ジャーナリストに、なぜ縦に写真を撮るのかと聞けば「単に、そうすれば雑誌の表紙を飾れるからだ」と答えるでしょう。ラルフ・ギブソン(Ralph Gibson)のように、自分の写真の見せ方やページ・レイアウトを管理するために自ら出版社を立ち上げた写真家もいます。デジタル化された画面で写真を見るようになった時代に、写真の歴史のこの時期に立ち返ってみるのも意味があることではないでしょうか。
 
MMF:パリに立ち寄った日本の観客が写真月間を楽しむために、何かアドバイスをいただけますか?
JLM:写真月間で企画された65の展覧会を一覧表にした無料のガイドブックがあります。その中から10点ほど選んでください。会場から会場へ歩いて行けるように、それぞれの会場があまり離れていない方がいいですね。そうすれば、歩きながらショー・ウィンドーを覗いたり、感じの良いビストロに立ち寄ったりしながらパリの街も楽しめますから。そして、ヨーロッパ写真館にもお立ち寄りください。日本の優れた芸術家である田原桂一氏が当館のために特別に制作してくださった「庭」を、展覧会めぐりの終着点にしていただくのもいいかもしれません。
Update: 2006.11 ページトップへ
パリ写真月間
1980年に始まり、今年で14回目を迎える写真イベント。パリ市内のおよそ70〜80の美術館やギャラリーで、注目の写真展や講演会が開催される。
会期
 
2006.11.1-2006.11.31
URL
 
パリ写真月間:
http://www.mep-fr.org/
moisdelaphoto2006/fr/
10-home/default.htm


ヨーロッパ写真館:
http://www.mep-fr.org
パリ写真月間 展覧会カレンダー
MMFで出会えるヨーロッパ写真館
本サイトの「今月の美術館・博物館」では、パリ写真月間の中心会場であるヨーロッパ写真館を紹介しています。
 
詳しくはこちら>>
B1Fインフォメーション・センターでは、「Mois de la Photo à Paris(パリ写真月間)」期間中に開催される展覧会や講演会、イベントなどの内容が分かるガイドブックのほか、ヨーロッパ写真館のカタログなど、写真に関する書籍を多数取り揃えています。
 

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。