![GINZA-ART LINK [ 銀座界隈で出会えるアート ]](image/ginza03/ginza_hd.gif)

メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランス(MMF)のある銀座界隈には企業が運営する美 術館やギャラリーなどが、数多く点在しています。銀座のMMFにお越しの際、併せて訪問いただきたい、こうしたアートスポットをご紹介してまいります。
Vol.1 パナソニック電工 汐留ミュージアム ルオーの繊細な色調と次世代照明
Vol.2 シャネル・ネクサス・ホール 伝説のフォトスタジオ「スタジオ アルクール」が記録したフレンチシネマのスターたち
Vol.3 ポーラ ミュージアム アネックス〜涼を呼ぶ〈ガラス〉と〈香り〉の共演〜華麗なる香水瓶の世界へ
Vol.4 資生堂ギャラリー 〜現代アーティスト、辰野登恵子の新作展〜 パリの老舗工房で生まれた石版画
Vol.5 アド・ミュージアム東京 〜時代を映し、時代をつくる〜 江戸時代から現代までの日本広告史をたどる

- 所在地
東京都中央区京橋3-6-18
LIXIL:GINZA 2階
- Tel
03-5250-6530
- 入場料
無料
- 開館時間
10:00-18:00
- 休館日
日曜日、祝日、年末年始、夏休み
- 展示スペース
・「ギャラリー1」(建築とデザインとその周辺をめぐる巡回企画展)
・「ギャラリー2」(現代美術個展)
・「INAXガレリアセラミカ」(やきもの個展)
- 「種子のデザイン展―旅するかたち―」
東京展/2011年12月1日(木)〜2012年2月25日(土)
大阪展/2012年3月10日(土)〜5月24日(木)
(ギャラリー大阪:大阪府大阪市中央区久太郎町4-1-3
伊藤忠ビル1F LIXIL大阪水まわりショールーム内
Tel 06-6733-1790)

- アクセス
東京メトロ銀座線「京橋駅」1番出口より徒歩2分。東京メトロ有楽町
線「銀座一丁目駅」9番出口より徒歩3分。都営地下鉄浅草線「宝町駅
」A4出口より徒歩3分。
- 運営
株式会社LIXIL
- 開設年
1981年
- 運営方針
「刺激と啓発」をキーワードに、建築やアートについて独自の視点で
さまざまな情報を発信。
※各データは2012年1月現在のものです。
LIXIL:GINZAビルの2Fに広がるINAXギャラリー(東京)は、「建築・デザインとその周辺」をテーマにした巡回展を開催する「ギャラリー1」、現代美術の個展をコンセプトにした「ギャラリー2」、さらに新鋭作家によるやきものの表現の場としての「INAXガレリアセラミカ」の3つの空間から構成されています。
「ギャラリー1」を訪れると、まずわたしたちの目をとらえたのは、ギャラリーの入り口に飾られた美しい写真でした。クワガタやカブトムシの角を思わせる美しい曲線を描く物体が、真っ白い背景に浮かび上がっています。
まさか、これが植物の種――?
そんな思いを抱いてギャラリーに一歩足を踏み入れると、そこには国内外から集められた種子100点余りの実物標本がずらりと並ぶ光景が広がっていました。通常、植物をテーマにした展覧会というと、植物の学名や「属」や「科」といった分類を思い浮かべるかもしれません。しかし5つにカテゴリー分けされたガラスケースには、それぞれ「風」「水」「火」「動物」「自力」のパネルが掲げられています。そう、今回の展覧会は、その副題「―旅するかたち―」にもあるよう、自身では動くことのできない植物の種子が、どんな自然の力を利用して次世代にその命をつないでいくかという点に着目したものです。そして確かにそれぞれの種子は、それぞれの“旅”が最もしやすいような姿をしていました。普段あまり気にとめたこともない種子のかたちに、こんな秘密が隠されていたとは――。ガラスケースの中の小さな種とともに、旅が始まりました。
種子たちが遠くに移動する手段として、わたしたちにも馴染みがあるのは、タンポポの種子をはじめとした、風に乗る方法です。今回の展示も、まず風を利用して旅をする種子たちが紹介されていました。中でも必見なのが、熱帯雨林に育つウリ科のつる性植物、アルソミトラの種子です。とても繊細な羽根を持つこの種子は、グライダーの発明の元になったといわれています。ギャラリーでは、日本では見ることのできないこのアルソミトラの種子が、弧を描きながら舞う貴重な映像も見ることができます。
また中には、山火事による火の力を借りる種子もありました。オーストラリアやニュージーランドに自生するバンクシアなどがその代表です。これらの植物は何年もの眠りを経て、火事の発生とともに熱の力で目覚め、種子をはじかせるのだそうです。山火事の多い地域に生息する植物ならではの、かたちや生態に驚かされるばかりです。
そして展示も終盤に差しかかった頃、ギャラリーの入り口でわたしたちを迎えてくれた、不思議な形の実物標本が登場しました。有機的な美しい曲線を持つツノゴマ
です。これは2本の鋭いツノで動物の毛にからまるなどして移動する、いわゆる「ひっつきむし」と呼ばれる種類の植物です。その鋭いツノは旅人が踏んでけがをすることもあることから、「悪魔の爪」「旅人泣かせ」などと言われるとか。植物が秘めるたくましさを感じさせる印象深い展示のひとつでした。
次の世代に命をつなぐため、植物はその種子を生息する環境にあわせて、見事に“デザイン”していました。人間の手が及ばない自然のはかり知れない叡智を、小さな種子から教えてもらった貴重な時間となりました。
今回の展示では、知っているようで意外と知らない、改めて見ると感心する、工夫に満ちた種子の姿をご覧いただけます。本展のように、わたしたちは身近なものでも少し視点を変えてみたら、違った世界が見えるのでは? といった感覚を大切に、企画を考えております。ギャラリーはショールームに併設しており、1つのフロアに3つのギャラリーがございますので、幅広いお客様にご来場いただいております。1階には書店もございますので、是非お立ち寄り下さい。
INAXギャラリー 村木玲美(むらきひろみ)