展覧会終盤を飾る
レ・ローヴのアトリエを一部再現
セザンヌは晩年の1902年、サント=ヴィクトワール山を一望できるレ・ローヴの丘の麓にアトリエを完成させます。それは、パリとプロヴァンスを行き来していたセザンヌが構えた最後のアトリエとなりました。
絵を描くときに最適な光が差し込む北向きに大きな窓をしつらえたこのアトリエでは、晩年の傑作といわれる《大水浴図》をはじめ、数々の名作が生まれました。セザンヌは毎朝、エクス市内にあったアパルトマンから、歩いてレ・ローヴのアトリエに通ったといわれています。現在、このアトリエはエクス郊外の同じ場所で、一般に公開されています。内部には石膏像や花瓶など、セザンヌが繰り返し描いたモティーフも当時のまま保存されています。
今回の展覧会を訪れる多くの人々の注目を集めているのが、このアトリエの一部再現です。残されたオブジェがアトリエの外に出るのは、1936年のロンドンで開催された展覧会以来とのこと。セザンヌが愛した22点のオブジェが、はるばる海を越え、日本にやって来たのです。
初来日を果たした
セザンヌ愛用のオブジェの数々
「わたしは今、夢を見ているようです。飛行機に10時間以上乗って、東京にやって来たはずなのに、いつも見慣れた場所、そう、エクスのセザンヌのアトリエにいるのですから」
こう語るのは、エクスでレ・ローヴのアトリエの館長を務めるミッシェル・フレッセ氏です。今回、展覧会場ではオブジェを展示するだけにとどまらず、まさにセザンヌが最後の数年間を生きた空間を再現するという試みがなされています。
アトリエ空間の右手にはりんごが、セザンヌの静物画を彷彿とさせるように白いナプキンとともに置かれています。よく見ると、ナプキンはサント=ヴィクトワール山の形をしています。色鮮やかな瓶や壺は、素朴で暖かな南仏プロヴァンスの空気を会場にもたらしてくれています。また、セザンヌの作品にもよく描かれているキューピッド像にもぜひ注目してみてください。さらに、必見なのが左手にある衝立です。これはセザンヌ家の別荘ジャス・ド・ブッファンにあったもので、セザンヌが子どもの頃、親友で後に小説家として名をなすエミール・ゾラ(Émile Zola/1840-1902)とともに落書きをしたという貴重なもの。
少年時代の大切な思い出の品を、最後のアトリエまで手元に置き続けたセザンヌの、意外な素顔が垣間見られます。
セザンヌがいったいどんな思いを抱いて、この最後のアトリエで絵を描き続けていたのか――。そんな想像を巡らしてみるのも、今回の展覧会のひとつの楽しみ方かもしれません。
- 会期
2012年3月28日(水)〜6月11日(月) - 会場
国立新美術館 - 所在地
東京都港区六本木7-22-2 - Tel
03-5777-8600(ハローダイヤル) - URL
http://www.nact.jp/ - 開館時間
10:00-18:00
金曜日:10:00-20:00
*入場は閉館の30分前まで - 休館日
火曜日
*ただし5月1日(火)は開館 - 観覧料
一般:1,500円
大学生:1,200円
高校生:800円
中学生以下:無料
*開催情報は変更となる場合があります。最新の情報は、公式サイト、ハローダイヤルでご確認ください。
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