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イベントレポート
EVENT REPORT

これまで開催したプログラムを
レポート形式でご紹介します。

MMMレクチャー
2019.8.2

MMMワークショップ「シルク印刷で自分だけのバッグを作ってみる」

日   時:
8月2日(金)18:30~20:00
会   場:
東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル3階
講   師:
シルク印刷工房SURUTOCO代表 辰巳量平氏

8月までMMMで開催されていた「新時代の夏を彩る“現代”のアーツ&クラフト特集」。
MMMワークショップでは、この特集内でグッズの展示・販売を行っていたシルク印刷工房SURUTOCO代表 辰巳量平さんを講師にお招きし、シルク印刷キットを用いたオリジナルバッグ作りをレクチャーしていただきました。

 夏休みということもあって、お子様連れの方も目立った今回のワークショップ。会場の前方にはデジタルスクリーン製版機「ゴッコプロ」や辰巳さんが手掛けたサンプルなどがディスプレイされ、机上にはシルク印刷に必要なグッズが用意されています。参加者の方の多くが、開始前からバッグ作りに必要なオリジナルの下絵の準備に取り掛かっており、今回のワークショップへの意欲が伝わってきます。
 まずは、シルク印刷とは何かということについて紐解いていきました。私たちが日々目にしている印刷物は、オフセット印刷と呼ばれるもので、短時間で大量印刷ができるのが特徴です。ブランケットと呼ばれる転写ローラーにインキを移し、そのブランケットを通して印刷。版と紙が直接触れない手法であることから「オフセット」と呼ばれています。それとは逆の印刷方法が、シルク印刷です。年賀状を刷る時にお馴染みだった「プリントゴッコ」も同じ手法ですが、穴の中をインクが通って布や紙に絵柄が直接印刷される「孔版(こうはん)印刷」と呼ばれるもの。古くは、絹(シルク)を使って印刷されていたため、その名が残っているそうです。
 辰巳さんは、「原始的な印刷方法ですが、何回も多色で重ねていくと、色々な表現ができるのがシルク印刷の面白いところです。加工が得意な印刷方法なので、箔を載せたり、グラデーションやマーブルを作ったりと、ひとつの版でも幅広い表現ができます」と柔らかい口調の関西弁でその魅力を語ってくださいました。
 そもそも辰巳さんがシルク印刷にとりつかれたのは、大学時代のことと言います。世の中に、自分の気に入ったTシャツがなかったことから、自分で作ってみようとシルク印刷の製版機を購入して作り始めたことがきっかけだったとか。その後、工房を立ち上げ、今では、日本全国でシルク印刷の楽しさを広めています。

  • ▲机の上には、フレームや版を貼る際に使う道具など、印刷に必要なグッズが置かれていた。
  • ▲製版機でデータ(版)を作り、フレームに版を貼れば、いよいよ印刷の工程となる。

 シルク印刷について学んだ後は、いよいよオリジナルのバッグ作りがスタート。最初に、辰巳さんがデモンストレーションを始めると、参加していたお子様たちも目をキラキラ輝かせながら辰巳さんの一挙手一投足を見つめていました。実際に作業を行ってみると、辰巳さんがおっしゃっていたフレームに版をきれいに貼るという工程が難しく、参加者の方も周りの協力を得ながら完成させていました。その後は、ターナー色彩とレトロ印刷JAMの共同開発で生まれたオリジナルインクの29色の中から1色を選んで印刷をします。「皆さんの印刷は一発勝負です。ここでかすれたりにじんだりすることがあるのですが、それも思い出として持ち帰ってください」と辰巳さんが話すと、会場から笑い声が漏れました。

  • ▲最後にドライヤーで乾かしたらオリジナルバッグの完成。オリジナルインクは29種類。大阪や東京といった地名の名前のついたインクもある。
  • ▲辰巳量平さん(右)に直接指導を受けながら印刷の工程へ。スキージーの角度は45度にし、上から下へ流しながら二回ほど刷ると印刷が完了。

 参加された方は、「夏休みの自由研究として作りに来ました。すごく楽しかったです」、「昔、プリントゴッコ好きだったので今回親子で来ましたが、没頭しちゃいました」、「旅行の時に使おうとサコッシュに印刷しました。素敵に仕上がりました」と、それぞれが満足のいくオリジナルバッグに仕上がったようでした。
「たとえば、総柄にしてみると、ここにこの絵柄が入っていればよかったとか思うんですよね。作りながらそのバランスも楽しんでもらえたらよいと思います」と辰巳さんが語ったように、ひとつひとつ仕上がりが異なるシルク印刷。印刷について学ぶと同時に、刷ることの楽しさにも触れることができたワークショップとなりました。

講師プロフィール

辰巳量平氏 SURUTOCO代表。
1988年生まれ。大学で言語学を専攻し、自ら言葉にまつわる制作を始める。文化施設の運営を経て、印刷分野の世界に入る。シルクスクリーンの作業場を全国に広げるプロジェクト(SURIMACCA+)のモデル店SURUTOCOを立ち上げ、現在日本全国14箇所で活動を展開中。日々作業場で一般の方にシルクスクリーン印刷に触れてもらう活動を積極的に行っている。

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