4月7日から国立新美術館で始まった
「大回顧展モネ 印象派の巨匠、その遺産」
展。
本展では約100点近くのモネの作品を鑑賞することができます。
モネが86年におよぶその生涯のうちに描いた総作品数は2000点以上ともいわれ、フランスの各地に点在する美術館でこの“光の画家”の作品を見ることができるのです。とくにモネが幼い頃に移り住み、戸外制作へと傾倒していく契機となったフランス北部のノルマンディ地方は、モネ作品の宝庫。モネの作品を訪ねてフランスを旅してみませんか?
今月の特集では、モネの作品が見られる代表的な美術館とその作品を地図とともにご紹介します。
© Photo Jean-Christophe Ballot/ EMOC. Musée de l'Orangerie
最晩年のモネが、白内障を患いながらも、渾身の力を振り絞って制作した連作《睡蓮》の大装飾画が鑑賞できる。制作当初のモネのヴィジョンを再現すべく、外光を取り入れられるように近年改装された展示室は、印象派ファンならずとも、ぜひ一度は訪れたいところ。かつて「印象派のシスティーナ礼拝堂」とも呼ばれたことのある、神々しいまでの静謐な展示空間に、旅の疲れも癒されるはず。
≪田舎の鉄道≫は、オルセー美術館から委託されている作品。近年改装された美しい15世紀の館には、中世の美術工芸品や16世紀から現代までの絵画コレクションが収められている。
モネが滞在し、30点以上の作品を描いたことで知られている、ブルターニュで一番大きな島ベル・イル。ブルターニュの港町モルレの美術館では、モネがこの島で制作した《雨のベル・イル》を鑑賞することができる。同館は寄贈による収蔵作品が多く、フランドル絵画やイタリア絵画、さらにはクールベやロダン、ドニの室内装飾など、広範囲なコレクションを楽しめる美術館だ。
モネが幼い息子を描いた《ジャン・モネの肖像》のほか、《エトルタ海岸の船》(1868〜69年)を所蔵する美術財団。旧市街に佇むルネサンス様式の館アセザ館で、蒐集家ジョルジュ・バンベルグのコレクションを公開している。ルネサンス期のイタリア絵画やボナール等の作品も所蔵している。
同館は先史時代やガロ=ローマン時代、中世の貴重な考古学資料、13、14世紀のステンドグラスや祭壇画等の宗教美術やオルレアン家に関するコレクションなどを所蔵している。《藤》はモネが晩年を過ごしたジヴェルニーの太鼓橋の上に咲き誇っていた藤棚を描いた作品。展示室をまわるごとにフランスの歴史が辿れる美術館。
15世紀からモネやピカソを含む近代までの作品を所蔵している美術館。とりわけ、地元ロレーヌ地方の画家、クロード・ロランの作品やドームをはじめとするナンシー派の400点近いガラス作品のコレクションは必見。
1870年代から今日までの近現代美術に焦点を当てた美術館。旧市街の中心に建つガラス張りの現代的な建物が特徴的だ。モネの他、クリムトやルノワールの作品を所蔵している。
税関吏の制服をはじめとする、税関にまつわるコレクション約1万点を収蔵する珍しい博物館。《税関吏の小屋、午後の効果》を所蔵している。
古代エジプトから今日までの作品を収蔵している美術館。《ジヴェルニーの池の片隅》はモネ自身が1923年に寄贈した作品である。ルーベンスやジョルジュ・ド・ラ・トゥール等の傑作と並び、近代美術も充実していることでよく知られている。
モネやロダンに代表される近代美術から、ボルタンスキーやシンディ・シャーマンなどの現代美術までを所蔵する美術館。ここではヴェルノン美術館所蔵の作品と同様、円形のキャンバスに描かれた《睡蓮》を見ることができる。
フランスはもとよりヨーロッパでも屈指の長い歴史と偉大なコレクションを誇る、創立200年を迎えた美術館。所蔵作品は古代から近代までを網羅しており、19世紀絵画展示室では、モネの《エトルタ、荒海》をはじめとする作品を見ることができる。
ブルゴーニュ地方の豊富な考古学、民族誌学資料に加えて、16世紀から20世紀までの絵画作品を所蔵している美術館。モネの《ザーンダム》を所蔵している。
© Photo RMN
フランスで最も古い美術館の一つとして知られている、ブルゴーニュ宮殿内の美術館。エジプト美術から現代の作品まで、さながら百科事典的な知識が得られるコレクションを有している。もちろん、印象派のコレクションもあり、モネの《エトルタ、アヴァルの門、港から出る漁船》を所蔵している。
グリューネヴァルトの《イーゼンハイム祭壇画》を所蔵していることで余りにも有名な美術館。近代や現代絵画も所蔵している。近代絵画展示室ではモネの《クルーズの谷、日没》を見ることができる。
1900年に開館した13世紀から現代までの作品を収蔵している美術館。なかでもジョルジュ・ド・ラ・トゥールの作品を3点所蔵していることや、現代作家の企画展を積極的に行なうことで知られている。モネの《ジヴェルニーの睡蓮》(1917年)と《ヴェニスのゴンドラ》(1908年)を所蔵している。
© Andreas Licht
古都ルーアンの中心にそびえるノートル・ダム大聖堂。モネは、大聖堂向かいの建物2階の同じ角度から天候や時間など、異なる条件ごとに大聖堂のファサードを何枚も描いた。その連作は、大聖堂の表面に当たる光が時の移ろいとともに姿をかえる、一瞬の様態をとらえている。
豊富な19世紀絵画のコレクションを有する美術館。ルーヴルに次ぐといわれるコローのコレクションのほか、モネをはじめとする印象派の作品も見ることができる。また、昨年春に改修された1階展示室では、20世紀美術の充実をはかり、フジタやシュルレアリスムの作品が展示されている。
中世から近代までを網羅した美術館。印象派コレクションも充実しており、モネの作品《解氷》が所蔵されている。
パリからジヴェルニーへ鉄道で向かう際の下車駅ヴェルノンにある美術館。モネ自身が寄贈した円形の《睡蓮》のほか、のちに息子が寄贈した《プールヴィルの日没》が展示されている。また同館は、モネの娘ブランシュの作品やモネの婿にあたるアメリカ人画家バトラーの作品等も所蔵。いずれの作品にもモネの家が描かれており、在りし日のジヴェルニーの雰囲気を伝えている。
© Photo RMN
日本でも親しまれている「印象派」という名称の由来となった作品《印象、日の出》が見られる美術館。87点もの絵画やデッサンをはじめ、モネが使ったパレットも所蔵されており、モネファン必見の美術館だ。ルーヴル美術館やオルセー美術館のように観光名所の中心にある美術館とは異なり、閑静な住宅街にあるため、美術館を訪れる際に素顔のパリに出会えることも、魅力の一つ。
© Photo RMN
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モネの青年時代の作品をはじめ、《サン・ラザール駅》《日傘をさす女性》《積み藁》《ルーアン大聖堂》といった名作が一堂に展示されている国立美術館。モネの遺族や収集家たちによって国に寄贈された作品は、いずれも第一級のもの。また、印象派の父と呼ばれるマネの《草上の昼食》や、ルノワールをはじめとした印象派のほかの画家たちの作品も多く収蔵されているため、モネとの共通点や相違点を比較する楽しみも持てる。
《ラヴァクールの日没》は《印象、日の出》(マルモッタン美術館蔵)と対をなすかのような構図で、夕暮れ時の沈みゆく太陽を描いた作品だ。美術館は、シャンゼリゼ大通りのほど近くにある、1900年のパリ万博の会場として建設された美しい建物。カフェも併設されているので、パリ散策の途中で立ち寄ってみては? 常設展示室は入館料無料。
© Photo RMN
パリのなかでも歴史ある町並みを誇るマレ地区にある、鉄砲や古武具、剥製をはじめとする狩猟をテーマにしたものだけを集めた博物館。この美術館の絵画展示室では、モネが描いた《狩》を見ることができる。ちなみに同館には、狩猟には欠かせない存在の猟犬を描いた17世紀、18世紀の作品が多数収められているので、犬好きの絵画ファンにはぜひお薦めの博物館でもある。
MMFの
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では、6月16日(土)開催のサロン講座「作品から紐解くモネの生涯」の講師、吉岡正人氏(画家・埼玉大学教授)の著書を販売しています。
「モネ プロが教えるぬり絵」
中央公論新社/998円(税込み)
「モネ 名画に隠れた謎を解く!」
中央公論新社/1680円(税込み)
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