• 1.フランス漫画博物館
  • 2.過去と現在の漫画をめぐるコレクション
  • 第37回アングレーム国際3.漫画フェスティバル
  • 4.フェスティバル受賞作品一覧

フランス漫画の聖地アングレーム−「国際漫画フェスティバル」に沸く町−

 
フランス西部シャラント県(Charente)の県都アングレーム。パリから電車で2時間半、ボルドーから1時間の距離に位置するこの町は、世界的に知られた「漫画の聖地」です。毎年1月末に開催される「アングレーム国際漫画フェスティバル(Festival International de la Bande Dessinée d'Angoulême)」は欧州最大規模を誇る漫画の祭典。数百人にのぼる漫画作家と、20万人以上の漫画ファンが世界中から集まり、数々の展覧会やイベントで賑わいます。今回は、活気溢れるフェスティバルの様子と、19世紀中頃の酒蔵を改装して、2009年6月に再オープンしたばかりの、「フランス漫画博物館(Musée de la bande dessinée)」を取材しました。
 

1.フランス漫画博物館

フェスティバルとともに始まった博物館の歴史

 
 
▲シャラント川の岸に建つフランス漫画博物館。
 

 アングレーム市は、16世紀以降製紙産業の盛んな町ですが、「フランス漫画博物館」の歴史は、1974年よりこの町で開かれている「国際漫画フェスティバル」と関連があります。もともと美術と歴史を対象としていたアングレーム美術館(1920年創立)が、1974年、フェスティバルの開催を機に、初めて漫画の原画をコレクションに加えたのです。その後、積極的に収集が進められ、1991年、国立フランス漫画イメージセンター(Centre national de la bande dessinée et de l'image)内にフランス漫画博物館が設立されました。

 
 
▲漫画の聖地らしく、通りの名前は吹き出しの中。
 
 
 
▲アングレームの民家のファサード。フランク・マルジュラン(Franck Margerin)のデッサンをもとにした壁画が描かれている。
 

 このセンターは、その後、「国際フランス漫画館(Cité internationale de la bande dessinée et de l'image)」になりました。国際フランス漫画館は、映画館、会議室、レストラン、図書館、書店などからなり、その中心的存在がフランス漫画博物館です。同館は、シャラント川の両岸に分かれて建っており、最近、コレクションは対岸のより広い新しい建物に移されました。河岸には紙の博物館もあります。

8000点のコレクションを楽しめる展示スペース

 フランスでは、漫画のことを「バンド・デシネ(bande dessinée)」、略して「BD(ベデ)」といいます。フランス漫画博物館は、ヨーロッパ初のBD博物館で、非常に貴重なコレクションが保存されています。フランスおよび外国の有名作家の原画やデッサン8000点に加え、フランス語圏を中心に、アメリカ、イギリス、イタリア、スペインなどの雑誌11万点以上などがコレクションされています。

 常設展示室では、年3回、作品を総入れ替えしながら、コレクションを順次公開しています。作品の媒体が紙のため、保存の観点から、3ヵ月以上にわたって同じ原画を展示することはできないからです。展示後の作品は、最低でも3年間、暗い収蔵庫で休ませなければなりません。

 
 
▲お話を伺った学芸員のアンブロワーズ・ラッサル(Ambroise Lassalle)氏、収蔵庫にて。
 
 
 
▲「漫画の歴史」の大展示室。作品保護のために照明が抑えられている。
 
 
展示スペースは1300m2に及び、下記の4つのセクションに分かれています。
 
1.漫画の歴史

19世紀から現在までのフランス語圏とアメリカの漫画を、クロノロジカルに展示しています。展示作品の媒体はさまざまで、フランスとベルギーの漫画は、週刊誌と「アルバム」と呼ばれるハードカバー、北米の作品は新聞漫画とコミックブックです。また、時代の証人としての漫画という側面にも光が当てられています。

 
 
▲スイス人作家ロドルフ・テプフェール(Rodolphe Töpffer/1799-1846)の作品。
『Libre de droits』
 
 
 
▲日本の「マンガ」の歴史を紹介するコーナー。残念ながら、原画は収蔵されていない。
 
 
2.アトリエ

視聴覚資料や、シナリオ、準備段階のデッサン、登場人物や背景、衣装などを研究した下絵、写真、ストーリーボードなどのオリジナル資料を用いて、漫画製作の過程を説明しています。

 
 
▲アンドレ・ジュイヤール(André Juillard)『レペルヴィエの7つの人生:第4巻:イロニムス(Sept vies de l'épervier, tome 4, Hyronimus)』の原画のためのクロッキー。
© citebd
 
 
 
▲視聴覚装置に見入る子どもたち。
 
 
3.サロン

原画が絵画のように壁に掛けて展示されており、漫画のスタイルや潮流の違いについて知ることができます。アメリカの作家ミルトン・カニフ(Milton Caniff/1907-1988)に連なる濃淡を強調したスタイル、『タンタン(Tintin)』の生みの親ベルギーの作家エルジェ(Hergé/1907-1983)に代表される明るいスタイル、『ルシアン(Lucien)』の作家フランク・マルジュラン(Franck Margerin/1952-)のスタイルなどが、その好例です。

 
4.ギャラリー

特定の作家と、その最近の作品をクローズアップする展示スペース。

 
 
▲1月には、マーティン・ヴォーン・ジェイムズ(Martin Vaughn James/1943-2009)と、その作品『檻(La Cage)』にオマージュを捧げたインスタレーションが行われた。
 
 
 
▲各セクションに設けられた読書コーナー。展示作品と関連した作品を読むことができる。
 
Update : 2010.4.1
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アングレーム国際 漫画フェスティバル

フランス漫画博物館(国際フランス漫画館内)
  • 所在地
    121 rue de Bordeaux
    BP 72308
    F-16023 Angoulême cedex
  • Tel
    +33(0)5 45 38 65 65
  • URL(国際フランス漫画館)
    http://www.citebd.org/
  • 開館時間
    <9〜6月>
    火-金曜日:10 : 00-18 : 00
    土・日曜日:14 : 00-18 : 00
    <7・8月>
    火-金曜日:10 : 00-19 : 00
    土・日曜日・祝日: 14 : 00-19 : 00
  • 休館日
    月曜日、1/1、5/1、12/25
  • 入館料
    <常設展>
    一般:4ユーロ
    割引料金:3ユーロ
    <企画展>
    一般:3ユーロ
    割引料金:2ユーロ
    <常設展+企画展>
    一般:6ユーロ
    割引料金:4.5ユーロ
*18歳以下と、15人以上のグループの付き添いの方、障害のある方の付き添いの方は無料です。また、9月から翌6月までの毎月第一日曜日は無料です。
MMFで出会えるフランス漫画
アングレームのその他のミュゼ

▲アングレーム紙博物館。
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