パリ近郊の中世の街1:2千年の歴史が香る街、サンリス

サンリス 美術・考古学博物館

5年間の修復工事を終え、再オープンしたミュゼ

▲美術・考古学博物館の外観

 ノートルダム聖堂に隣接したこの博物館は、ガロ=ロマン時代の遺跡から現代絵画に至るまで、サンリスの2千年以上にわたる歴史と文化を伝える豊かなコレクションを有しています。かつて司教の館であった博物館の建物は、ガロ=ロマン時代の城壁を利用し、その上部に増築するかたちで建設されたもので、城壁に沿って緩やかにカーブを描いているのが特徴です。博物館のファサードには過去の増築の痕跡が地層のように残されていて、建物がたどってきた長い歴史を物語っています。
 この建物は1964年に歴史的建造物に指定され、後にサンリス市によって買い取られて1989年に現在の博物館が開館しました。そして2012年6月、5年間にわたる大規模な改修工事を終え、博物館は新たに扉を開いたばかり。より分かりやすい展示と快適な空間で、サンリスの歴史とその魅力を紹介しています。

展示室そのものが考古学資料―考古学・中世部門の展示室

▲博物館地下の、アラットの森で発掘された神殿の奉納物の展示

 博物館の見学順路は地下の考古学部門から始まります。3世紀のガロ=ロマン時代の城壁の土台部分が露わになった地下スペースは、展示室そのものが考古学資料といった様相。ここではサンリス近郊のアラットの森(forêt d'Halatte)で発見された1世紀中頃から5世紀初頭の神殿跡の発掘品を見ることができます。また隣接した部屋では、1世紀から2世紀の住居跡の発掘現場がそのまま展示対象として公開されています。
 続く1階の展示室ではガロ=ロマン時代の遺跡の発掘品や、中世のキリスト教の典礼にまつわる装飾美術などを紹介しています。考古学の展示ではサンリスで発掘されたローマ皇帝クラウディウス(Claudius/前10-54)の彫像の青銅製の台座に注目です。約2千年の歴史の中で鋳造に再利用されることなく、オリジナルのまま保存されたという考古学史上まれに見る貴重な代物です。

▲博物館地下のガロ=ロマン時代の住居の遺跡
▲博物館1階のクラウディウスの彫像の台座の展示

サンリスゆかりの画家を紹介―美術部門の展示

▲博物館2階の礼拝堂にあるトマ・クチュールの絵画作品

 博物館2階ではサンリスにゆかりのある画家のコレクションを主軸に、17世紀から現代の絵画の展示が行われています。1815年にサンリスで生まれたトマ・クチュール(Thomas Couture/1815-1879)は、マネ(Édouard Manet/1832-1883)やピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(Pierre Puvis de Chavannes/1824-1898)の師として知られる画家。彼はパリから故郷のサンリスへと戻った際、1860年よりこの博物館の建物の礼拝堂をアトリエとして使用していました。アトリエのあった礼拝堂には、肖像画や宗教画などのクチュールの作品が壁一面に飾られています。
 またセラフィーヌ・ルイは、装飾的なスタイルが特徴のサンリスゆかりの女流画家です。画面いっぱいに花々を描いた作品などからは、素朴派に分類される彼女の大胆な画風と、そこに宿る独特の女性らしさをうかがうことできます。「サンリスのセラフィーヌ」(Séraphine de Senlis)の愛称で親しまれる、サンリスとは切り離せないアーティストのひとりです。

Update:2013.3.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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サンリス基本情報

博物館基本情報

  • 所在地
    Musées de Senlis Place Notre-Dame 60300 Senlis
  • Tel
    美術・考古学博物館:
    +33(0)3 44 24 86 72
    スパイ博物館、狩猟博物館:
    +33(0)3 44 26 15 50
  • URL
    http://www.musees-senlis.fr/
  • Eメール
    musees@ville-senlis.fr
  • 開館時間
    ・美術・考古学博物館
      月曜日・木曜日・金曜日:
      10:00-12:00、14:00-18:00
      水曜日:14:00-18:00
      土曜日・日曜日・祝日:
      11:00-13:00、14:00-18:00
    ・スパイ博物館、狩猟博物館
      火曜日:14:00-18:00
      水曜日・木曜日・金曜日:
      10:00-12:00、14:00-18:00
      土曜日・日曜日・祝日:
      11:00-13:00、14:00-18:00
    ※狩猟博物館上階は、平日の午後、週末の午前・午後に一時間おきのガイド付き見学。
  • 休館日
    ・美術・考古学博物館
    火曜日、1月1日、5月1日、12月25日
    ・スパイ博物館、狩猟博物館:
    月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
  • 入館料
    3つの博物館の共通券:
    一般4ユーロ、割引2ユーロ
    各博物館:一般3ユーロ

MMFで出会えるサンリス

*情報はMMFwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は博物館ホームページでご確認いただくか、MMFにご来館の上おたずねください。

 

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