Dossier special - 海外の特集

  • 1.マルモッタン美術館の珠玉の名画に焦点をあてた企画展
  • 2.モネの《印象―日の出》を解き明かす Part1
  • 3.モネの《印象―日の出》を解き明かす Part2

マルモッタン美術館 モネ《印象―日の出》展

モネの《印象―日の出》を解き明かす Part1

《印象―日の出》の原点は?

▲ブーダン《海岸の光景》1869年
マドリード・ティッセン=ボルネミッサ美術館寄託
©Colección Carmen Thyssen-Bornemisza en depósito en el Museo Thyssen-Bornemisza

 クールベ、ヨンキント(Johan Jongkind/1819-1891)、ブーダン(Eugene Boudin/1824-1898)ら、モネがキャリアの初期に親交を持ち大きく影響を受けた画家たちの作品で展覧会は幕開けします。海辺から望む日の出や夕日を描いた作品は、まさにモネの《印象―日の出》を彷彿とさせる風景です。

▲ヨンキント《水辺の風車》1866年
個人蔵
© Brame et Lorenceau

 また1870年から1871年にかけて滞在したロンドンで、モネはイギリスの巨匠ターナー(Joseph Mallord William Turner/1775-1851)の作品や、霧や粉塵によって視界の霞んだロンドンの風景に出会いました。そうした作品やロンドンの風景からも、テクニックや美意識、モティーフの面で、《印象―日の出》との共通点を見出すことができます。

▲ターナー《浅瀬の蒸気船に警告するのろしと青い光》1840年 
ウィリアムズタウン・クラーク美術研究所所蔵 
©Sterling and Francine Clark Art Institute, Williamstown, Massachusetts, USA (photos by Michael Agee)
▲モネ《ル・アーヴル港・夜の効果》1872年 
個人蔵 
© Collection particulière

《印象―日の出》はどこから描かれたか?

▲ル・アーヴルの大埠頭のポストカード(1900年頃)。中央の白い大きな建物がモネの滞在したアミローテ・ホテル

 本展の主役である《印象―日の出》が展示されているのは、展覧会の中盤です。ル・アーヴル港の風景画が集められたこのセクションでは、1872年から1874年にかけて描かれたモネの作品に加え、ブーダンやターナーの描いたル・アーヴル港の作品を展示しています。各作品の傍らに貼られているのは、それらの作品が港のどの位置から、どの方角に向かって描かれたかを示す地図パネル。戦争による破壊行為で、街の大部分が失われたル・アーヴルですが、19世紀当時の写真資料や地図を駆使し、絵画と対比させながらイコノグラフィー(図像学)の研究が徹底して行われています。検証の結果、《印象―日の出》が描かれたのは、大埠頭にあったアミローテ・ホテルの一室からではないかと推測されています。

《印象―日の出》はいつ描かれたのか?

 また本展では地形学、気象学、天文学の視点でモネの《印象―日の出》を分析し、その描かれた日時を割り出すというユニークで興味深い調査を行っています。太陽の位置、ル・アーヴル港の水門の開放時間、潮の高さ、風向きなど、作品に描写されたあらゆるディテールが綿密に調べ上げられました。当時の気象観測結果と作品を照らし合わせたところ、モネが《印象―日の出》を描いたのは、1872年の11月13日朝7時半頃である可能性が高いという結論に達しています。長らく夕日と混同され続けていたこの作品のモティーフは、改めて日の出であることが証明されました。瞬間の風景を短時間で描いた印象派の画家の作品であるからこそ可能な研究テーマです。

次ページでは、《印象―日の出》をめぐる人物や周辺作品に迫ります。>>

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Update : 2014.12.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)ページトップへ

マルモッタン美術館 モネ《印象―日の出》展

会期
2014年9月18日(木)〜
2015年1月18日(日)
会場
マルモッタン美術館
所在地
2 rue Louis-Boilly 75016 Paris
Tel
+33 (0)1 44 96 50 33
URL
http://www.marmottan.fr/
開館時間
火曜〜日曜:10:00-18:00
*木曜日は21:00まで開館
休館日
月曜日、12月25日、1月1日、5月1日
入館料
一般:11ユーロ
割引:6.5ユーロ
7歳以下:無料
アクセス
地下鉄9番線La Muette駅下車、
徒歩約5分
※この情報は2014年12月更新時のものです。

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