アラン・プジュトゥ氏(以下A.P.):ルドゥーテに関連した展示作品として、まずジョゼフィーヌの所有していた食器セットを挙げることができます。セーヴル、ベルリンの陶磁器で、いずれの花のデザインも、『ユリ科図譜』や『マルメゾンの庭園』などルドゥーテの著作の図版からインスピレーションを得ています。
またジョゼフィーヌが最期を迎えた寝室には、当時ルドゥーテの作品が7枚飾られていたのですが、現在マルメゾン城美術館ではその様子を再現しています。残念ながらそれら7作品は個人の所有者が売却した際に分散してしまいました。現在寝室の壁に飾られているのは現代のアーティストによる水彩画の複製です。ほかにもルドゥーテの手直しの跡が見られるモノクロの試し刷りの版画作品や水彩画など、常設展示は行っていませんが、ルーヴル寄託の貴重なルドゥーテのコレクションを所蔵しています。
A.P.:2014年はジョゼフィーヌの没後200年にあたりました。それを記念し当時の趣を復元するための庭園の再整備が行われました。バラ園はジョゼフィーヌの過ごした第一帝政期をできる限り忠実に再現しています。中にはルドゥーテの描いたバラの品種も見つけることができます。ジョゼフィーヌは暴君であったナポレオンとのすれ違いによる寂しさを、このバラ園に愛情を注ぐことで紛らわせていたのです。
A.P.:ルドゥーテは植物画を描くとき、写真家がアングルを定めるときのように、モティーフの周囲に枠を付け加えることが頻繁にありました。時にその枠から花や種子がはみ出すようにして描かれているのがとても印象的です。当時そうしたエレガントな構図で植物画が描かれるのは珍しいことでした。ルドゥーテの様式美に日本の皆さんもきっと共感されるかと思います。ルドゥーテの作品にはナポレオンを描いたダヴィッド(Jacques-Louis David/1748-1825)の絵画のように背景に歴史や物語は隠されていません。描かれているのは花と種子の美しさのみです。そうしたシンプルな植物画の作品に、日本美術に通じる何かを感じとれるのではないでしょうか。
[FIN]
Update : 2015.3.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。