4月より東京の千代田区立日比谷図書文化館では『ルドゥーテ「美花選(びかせん)」展』(4月18日〜6月19日)が開催されます。ルドゥーテにまた注目が集まるこの時期、MMMではルドゥーテ特集を2ヶ月間にわたりお届けします。
ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(Pierre-Joseph Redouté/1759-1840)は19世紀フランスで活躍したベルギー出身の植物画家。第一帝政期にナポレオン(Napoléon Bonaparte/1769-1821)の妻ジョゼフィーヌ(Joséphine de Beauharnais/1763-1814)の庇護のもと、マルメゾン城の庭園に咲く世界中のバラを描いたことで有名です。ルドゥーテ特集第1弾では、このマルメゾン城美術館で出会うことのできるルドゥーテの世界をご紹介します。
「花のラファエロ」または「バラのレンブラント」と称されるルドゥーテは、緻密かつエレガントなタッチで植物の花や種子を描き、多数の植物図譜を出版したことで知られています。ルドゥーテによる植物画はその洞察力による学術的な価値だけでなく、優雅な芸術性が高く評価され、テキスタイルや陶磁器、家具といった数々の装飾芸術にインスピレーションを与えました。そんなルドゥーテの作品は時代を超え、今もなお人々を魅了し続けています。
ルドゥーテは1759年、現在のベルギーの小さな村、サン=テュベール(Saint-Hubert)で生まれました。芸術家の家系に生まれたルドゥーテは、職業画家であった父のもとで修行をし、23歳になった1782年、舞台装飾画家である兄の手伝いをするためにパリへとやってきます。パリにやってきた当時、ルドゥーテは時間を見つけては王立庭園(現・パリ植物園)へと通い、草花を描くことに没頭しました。そこで出会ったのが、王室で役人を務めていた植物愛好家のシャルル・ルイ・レリチエ・ド・ブリュテル(Charles Louis L'Heritier de Brutelle/1746-1800)でした。ルドゥーテの植物画家としてのキャリアは、このレリチエとの出会いによって華麗に花開きます。ルドゥーテはレリチエが手掛けた植物図譜の挿絵を担当し、本格的に植物画の世界へと入りました。さらにレリチエを通してマリー=アントワネット(Marie -Antoinette/1755-1793)のプティ・トリアノンの庭園に出入りするようになり、その才能を認められることで王妃の蒐集室付素描画家となったのです。
しかしヴェルサイユでのキャリアはフランス革命により長くは続かず、ルドゥーテはパリの自然史博物館付植物画家へと転身し再出発します。その後程なくしてルドゥーテに新たに重要な出会いが訪れました。時代はナポレオンを擁する第一帝政期へと移り変わり、皇后ジョゼフィーヌがルドゥーテの新しいパトロンとして現れたのです。マルメゾン城の主で、植物をこよなく愛したジョゼフィーヌは、宮廷画家としてルドゥーテを雇い、世界各地から集めた庭園内の植物を描くことを任せたのでした。
次ページでは、ジョゼフィーヌとルドゥーテのバラへの愛情が込められた
『バラ図譜』の誕生秘話をご紹介します。>>
Update : 2015.3.1 文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
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