ピカソのアトリエだった部屋の窓からは地中海を一望することができます。ピカソはギリシア神話や地中海の伝説にたいへんな興味を抱いており、この時期も、地中海に臨む立地に触発されたのか、サテュロスやユリシーズなどのギリシア神話に登場する妖精や英雄を主題とした絵を多く残しました。また「創作だけでなく、美術館を飾ってもいるよ」との言葉通り、この部屋に≪アンティーブの鍵≫と題されたユーモアあふれる壁画も描きました。
2ヶ月間の創作の様子は、パリ時代からピカソの知り合いの彫刻家であり写真家であるミシェル・シマン(Michel Ciment)によって克明に記録されていました。絵の具やカンヴァスが雑然と並ぶアトリエ、画家のポートレート、当時のパートナーだったフランソワーズ・ジロー(Françoise Gilot)やアトリエを訪れた詩人で友人のエリュアール(Paul Éluard)などとともに収まった、ピカソの飾らない姿が何枚もモノクロームの写真として残っています。この写真群もこの美術館ならではの貴重な展示品です。 ピカソの作品は、≪人生の喜び≫や≪サテュロス、牧神と三つ又の鉾を持つケンタウロス≫、≪ユリシーズと人魚たち≫といった大作の他、デッサンや小作品は主題ごとにまとめられています。牧神の顔の習作、海の幸の静物画、この土地の人々の肖像など、当時のピカソの興味がどこにあったのかが感じられる面白い構成となっています。
また陶器作品は、シンプルで素朴かつ伸びやかなピカソの作風をよく伝えるオブジェですが、その数、質ともにたいへん見応えがある一大コレクションとなっています。田中久美子(Kumiko Tanaka/写真・文)
- 所在地
4, rue des Cordiers 06600 Antibes - Tel
+ 33 (0)4 92 90 54 28 - Fax
+33 (0)4 92 90 53 62 - 開館時間
<9月16日-6月14日>
10:00-12:00、14:00-18:00
<6月15日-9月14日>
10:00-18:00
※7月〜8月の水曜・金曜は20:00まで開館。入館は閉館の30分前まで。 - 休館日
月曜、1月1日、5月1日、11月1日、
12月25日 - 入館料
常設展、展覧会共通。
一般:6ユーロ
割引料金(学生、65歳以上など):
3ユーロ
16歳未満:無料
※美術館への入館と企画展は無料。 - アクセス
SNCFマルセイユ・ヴァンティミーリア線(Ligne Marseille - Vintimille)アンティーブ(Antibes)駅下車。
- ニースから約20km、カンヌからは約12kmに位置する地中海に臨むリゾート地。古くから交通の要衝として拓けた町は、19世紀には一大リゾート地となった。ヨーロッパ有数のヨットハーバーがあることでも知られる。7月には国際ジェズ・フェスティバルが開催され、世界各国から多くの人々が訪れる。
- アンティーブ・ジュアン・レ・パン観光局
http://www.antibes-juanlespins.com/
- MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、12月14日まで国立新美術館とサントリー美術館で開催中の「巨匠ピカソ」展のカタログをはじめ、ピカソに関する画集や展覧会カタログを閲覧いただけます。また「MMFのライブラリーから」では、写真家ブラッサイが撮影したピカソとその作品の写真集をご紹介しています。
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