フェルナン・レジェ美術館 ピカソ戦争と平和美術館 アンティーブ、ピカソ美術館
 
 
ピカソ戦争と平和美術館 ピカソが愛した陶器の里にある壁画美術館
  先月から連載でお送りしている南仏のミュゼレポート。今月は、陶器の里として知られるヴァロリスにあるピカソ戦争と平和美術館をご紹介します。ヴァロリスで陶器制作の面白さに開眼したピカソは、町の城にある礼拝堂に、強いメッセージを込めた一枚の壁画を残しました。
現在、国立新美術館サントリー美術館の東京の2会場で「巨匠ピカソ」展が、またパリでもグランパレ・ナショナル・ギャラリールーヴル美術館オルセー美術館の3館でも同時に展覧会が開催され話題となっているピカソ。ヴァロリスと一枚の壁画を収めた美術館からは、また違った巨匠の一面を垣間見ることができるでしょう。
   
     
 
ヴァロリスで始めた陶器制作 戦争に対する抗議から生まれた作品 禍いと平安の対比による構成

▲ヴァロリスの陶器店街。
  スペインで生まれ、19歳の時にパリにやってきたピカソ(Pablo Picasso)は、祖国がフランコ(Francisco Franco)による独裁政権となってからは故郷に戻ることはありませんでした。若い頃はパリで研鑽を積み、そこで着々と成功も収めましたが、壮年を過ぎた頃から南仏に足しげく通い、遂には居を定めます。そして91歳で没するまで南仏で過ごしたのでした。太陽と紺碧の海があるこの地は、故郷スペインを彷彿とさせたのかもしれません。
 ピカソがヴァロリスを訪れたのは1946年のこと。毎年恒例の陶器市のときのことでした。マドゥーラ窯に立ち寄って、この時自ら土をこねて三つの作品を制作しています。
職人が土でピカソが作った作品を焼き、1年後に再訪したピカソに見せたところ、ことのほか喜び、この窯に通うようになりました。1947年にピカソが制作した陶器作品は2000個以上にのぼるといわれています。現在マドゥーラ窯はピカソの陶芸作品の公式レプリカを販売するアート・ギャラリーとなっています。

 陶器作りの熱が高じて、ピカソはヴァロリスにアトリエを構え、陶器以外にも彫刻などを精力的に作りました。アトリエがあったフルナスの通りは現在ピカソ通りと呼ばれています。それまでヴァロリスの職人たちは、おもに実用陶器を作っていましたが、ピカソとの出会いに触発され、やがてヴァロリスは芸術性の高い陶器作品を生み出す土地となりました。現在もたくさんの作家がここで創作活動を行っています。この他にもブロンズ像の≪羊を抱える男≫を町に寄付するなど、ピカソがヴァロリスにもたらした貢献は少なくありません。

▲フルナス通りに建つピカソのアトリエ跡。
 
▲城の前の広場にある≪羊を抱えた男≫の像。

田中久美子(Kumiko Tanaka/写真・文)

ヴァロリスで始めた陶器制作 戦争に対する抗議から生まれた作品 禍いと平安の対比による構成

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ピカソ戦争と平和美術館
所在地
Place de la Libération 06220 Vallauris
Tel
+33(0)4 93 64 71 83
Fax
+33(0)4 93 64 50 32
URL
http://www.musee-picasso-vallauris.fr/
開館時間
<6月15日-9月14日>
10:00-12:15、14:00-18:00
<9月15日-6月14日>
10:00-12:15、14:00-17:00
休館日
火曜、1月1日、5月1日、11月1日、11月11日、12月25日
入館料
一般:3.25ユーロ
割引料金(16歳〜25歳):1.70ユーロ
16歳未満:無料
*毎月第一日曜は無料。

アクセス
SNCFゴルフ・ジュアン(Golfe Juan)駅下車、バスでヴァロリス中心地、美術館まで約20分


ヴァロリス基本情報
プロヴァンス地方、カンヌの北東に位置する山間の小さな町。陶器に適した良質の粘土質の土壌をもつため、古くから陶芸の町として栄えた。現在も町には陶器店や工房が軒を連ねる。
ヴァロリス・ゴルフ・ジュアン観光局

MMFで出会えるヴァロリスのピカソ
MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、ヴァロリスのピカソ戦争と平和美術館に関するガイドやカタログを閲覧いただけます。
  また、現在国立新美術館とサントリー美術館で開催中の「巨匠ピカソ」展のカタログも閲覧いただけます。「MMFのライブラリーから」では、写真家ブラッサイが撮影したピカソとその作品の写真集をご紹介しています。

*情報はMMMwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は観光局ホームページ等でご確認いただくか、MMMにご来館の上おたずねください。