
19世紀末から20世紀にかけて、海水浴などの海辺でのヴァカンスが普及するにつれ、女性のヴァカンス着にも水兵のスタイルから直接インスピレーションを受けたものが多く作られました。また同じ頃にそれまでの女性のイメージを覆す、大胆に足を見せる思い切ったデザインの女性用の水着が登場します。これはベルエポックという女性解放の時代の風潮の中で、「マリン・スタイル」が新しい時代の女性像を後押しする存在であったことを暗示するような出来事でした。
第一次世界大戦が始まってからも、「マリン・スタイル」は女性のファッションのワードローブの一部として活気を失わずにいました。ココ・シャネル(Coco Chanel)は1916年に男性用の下着や水兵のニットに使用されていたジャージー素材を用いながら、セーラーカラーの女性用のスーツを作り、大きな成功を収めます。
▲水兵の格好をした女流作家のコレット(Sidonie-Gabrielle Colette)、23歳の時。
© Musée Colette, Saint-Sauveur-en-Puisaye
それまでの女性の服装にはなかった動きやすさとしなやかさは、まさに当時の女性に必要とされていたものでした。シャネルは1913年に海岸沿いの高級リゾート地であるドーヴィルにブティックを構えていたこともあり、以降も大胆に「マリン・スタイル」をデザインに取り入れながら、女性の新しい時代、またモードの新しい時代を切り開いていきます。
今回の企画展の大展示室には、1960年代から現在までの有名デザイナーによる「マリンスタイル」の展示が行われています。イヴ・サン=ローラン(Yves Saint-Laurent)、ソニア・リキエル(Sonia Rykiel)、バレンシアガ(Balenciaga)、ジバンシィ(Givenchy)、ヨージ・ヤマモト(Yoji Yamamoto)、ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)、その他名立たるデザイナーたちの創り出した華やかなモードが、同一のテーマのもとに集められた貴重な空間となっています。展示室の奥へと途切れることなく続いている展示台はファッション・ショーのステージさながらです。展示品には青と白を基調としたものや、ボーダーやセーラーカラーなど、「マリン・スタイル」独特の共通点が多く見られますが、デザイナー独自のインスピレーションによって、どれも個性的なデザインであるのが印象的です。
フランス海軍のユニフォームが誕生してから、オートクチュールのファッションにこうして無限のインスピレーションを与えるまで、「マリン・スタイル」が廃れることなく存在し続けているのは、水兵の服装そのものに魅力があっただけではありません。そこにはいつの時代も水兵がロマンあふれる冒険者、ヒーローとして、人々の憧れの対象であったことが大きく影響しています。展覧会では映画、文学、絵画、写真、漫画、シャンソンによって理想化された、水兵のイメージについても展示を行っています。フランスのモードの歴史が、単純に表面上のデザインの歴史なのではなく、デザインの着想源にまつわる文化の歴史でもあることを証明してくれる展示内容です。
第一次世界大戦が始まってからも、「マリン・スタイル」は女性のファッションのワードローブの一部として活気を失わずにいました。ココ・シャネル(Coco Chanel)は1916年に男性用の下着や水兵のニットに使用されていたジャージー素材を用いながら、セーラーカラーの女性用のスーツを作り、大きな成功を収めます。

© Musée Colette, Saint-Sauveur-en-Puisaye

![]() アンサンブル 2006年 © Patrick Stable |
![]() 春夏コレクション 2007年 © Monica Fendi |
![]() 錨のマークのドレス 2008年 © Frédérique Dumoulin |
フランス海軍のユニフォームが誕生してから、オートクチュールのファッションにこうして無限のインスピレーションを与えるまで、「マリン・スタイル」が廃れることなく存在し続けているのは、水兵の服装そのものに魅力があっただけではありません。そこにはいつの時代も水兵がロマンあふれる冒険者、ヒーローとして、人々の憧れの対象であったことが大きく影響しています。展覧会では映画、文学、絵画、写真、漫画、シャンソンによって理想化された、水兵のイメージについても展示を行っています。フランスのモードの歴史が、単純に表面上のデザインの歴史なのではなく、デザインの着想源にまつわる文化の歴史でもあることを証明してくれる展示内容です。
![]() ジバンシィの作品 2007年 © Yoko Masuda |
![]() Luc-Marie Bayleによる写真 1948年 © MNM |

文・写真:増田葉子(Yoko Masuda)
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。
著者プロフィール
明治大学文学部史学地理学科卒業後、パリ第4大学(ソルボンヌ大学)で美術史学を専攻し、修士課程修了。現在同大学美術史学博士課程。専門は19世紀後半の装飾美術、主にジャポニスム。

- 所在地
Palais de Chaillot 17, place du Trocadéro 75116 Paris - Tel
+33(0)1 53 65 69 69 - Fax
+33(0)1 53 65 69 65 - URL
http://www.musee-marine.fr - 開館時間
10 :00 -18 :00 - 入館料
<常設展>
一般:9ユーロ、割引料金:7ユーロ、
6歳-18歳:5ユーロ
<企画展>
一般:7ユーロ、割引:5ユーロ、
18歳以下:無料 - アクセス
地下鉄トロカデロ駅 (Trocadéro)より徒歩。 - 企画展情報
「水兵がモードを創る」
Les marins font la mode
2009.2.5-2009.7.26
>>詳しくはこちら
※この企画展の図録は、MMFインフォメーション・センターにて閲覧いただけます。


- MMFのB1Fインフォメーション・センターでは、カタログやこれまでに開催した展覧会図録など海洋博物館の関連書籍を閲覧いただけます。

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