ニエプスの足跡を辿るには彼の生まれ故郷シャロン=シュル=ソーヌも見逃せません。19世紀最大の発明ともいえる写真を生んだ彼は、この町のヒーローです。フランス国内に写真のコレクションを所蔵している博術館は幾つかありますが、写真のみならずカメラをはじめとする写真に関するありとあらゆる機材の最大のコレクションを持っているのが、このニセフォール・ニエプス博術館なのです。
ニエプスは1833年に亡くなりました。彼の死後、息子たちがニエプスの発明にあまり関心がなかったこともあり、ニエプスの残したオブジェの多くは散逸してしまいます。しかし彼の死から約30年後の1861年、ニエプスの所持品などが再び一堂に集められました。その中には、ニエプスが最初に写真撮影に成功した際に使用したカメラもありました。そしてこれらのコレクションをもとに1974年に市立博術館としてオープンしたのが、ニセフォール・ニエプス博術館です。後にさまざまな寄贈を受け、ニエプス自身のコレクションのほか、現在は300万枚もの写真コレクション、さらに6,000点のカメラ機材が収蔵されています。11室ある展示室のうちの1室がニエプス・コレクションの常設展示に割かれ、彼の使用したカメラが部屋の中央に象徴的に置かれています。
![]() © Musée Nicéphore Niépce |
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また、この博術館ではニエプスの写真以外の発明も知ることができます。写真の発明以前に彼が兄クロードとともに発明した船のモーターの設計図やペダルのない自転車の模型、さらにはニエプスが書き残した書簡などの貴重な資料も展示されています。
ニエプスが1824年に「エリオグラフィー」と名付けた最初の写真を発明した後、パリですでにパノラマ画家として名を知られていたダゲール(Louis Daguerre)が彼の元を訪れました。以降ふたりは共同研究に取り組み始めます。そして努力の末、1832年に発見された新たな撮影方法が「フィゾトタイプ」というものでした。この手法によって露出にかかる時間が一気に短くなり、8時間ほどになりました。この研究が1839年に「ダゲレオタイプ(銀板写真)」の誕生を導くことになりますが、ニエプスはその成果を見ることなくこの世を去りました。
このダゲレオタイプこそが、最初に商品化され一般化したカメラでした。そのためダゲールの名はニエプスに比べ、広く知られています。これらダゲレオタイプのカメラや、露出時間の短縮により可能となった肖像写真の豊かなコレクションも博術館で見ることができます。
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![]() © Musée Nicéphore Niépce |
この博術館の最も大きな特徴は、博術館内に写真制作の研究室を備えていることです。また常設展のほか、1年に6〜8つの企画展が開催されます。企画展の多くは、現代写真家とのコラボレーションという形で行われ、写真家自らが博術館の研究室スタッフとともに作品を作り上げていきます。既存のコレクションにとどまらず、写真というメディアの現代における存在価値をも見直しながら、クリエーションを推進していく新しい形の博術館の姿を模索しているのです。
![]() © Musée Nicéphore Niépce |
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- 所在地
28 quai des Messageries 71100 Chalon-sur-Saône - Tel
+33(0)3 85 48 41 98 - URL
http://www.museeniepce.com - 開館時間
<9〜6月>
9:30-11:45、14:00-17:45
<7〜8月>
10:00-18:00 - 休館日
火曜日、祝日 - 入館料
無料 - アクセス
パリ・リヨン駅からTGVでシャロン=シュル=ソーヌ駅下車。
- インフォメーション・センターでは、ニセフォール・ニエプス博術館の図録やパンフレットを閲覧いただけます。

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