Rénovation du Musée d&rsquoOrsay 新生オルセー美術館

オルセー美術館学芸員インタビュー2

新たに仲間に加わった注目すべき作品

MMF:改装にあたって展示品が以前よりも増えましたが、特にオルセーのどの場所でそれらに出会うことができますか?

X.R.氏:新たな展示作品として挙げられるのが、オルセーの南側に位置する、以前は展示設備のなかった時計塔(パヴィヨン・アモン)内に展示されている装飾美術の数々です。時計塔(パヴィヨン・アモン)に何層ものフロアをつくり出すことで2,000uの空間が新しく生まれました。ここでは絵画、彫刻、装飾美術を併せた展示を行っています。このパヴィヨン・アモンの改装によって、今まで収蔵庫に保管されていたコレクションや、新しく所蔵されたばかりの装飾美術、絵画のコレクションの展示が可能となりました。

▲2010年に新しく収蔵されたモーリス・ドニ《イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像》1897年
© Musée d'Orsay, Dist. RMN / Patrice Schmidt

▲絵画、装飾美術、彫刻の展示が同時に行われているパヴィヨン・アモンの展示室

 

MMF:新しい収蔵品も含めて、これまでになかった展示で最も注目すべき作品を教えてください。

X.R.氏:最近新しく収蔵された作品では、象徴主義のとても素晴らしい作品であり、額縁も画家自身の手によって作られているモーリス・ドニ(Maurice Denis/1870-1943)の《イヴォンヌ・ルロールの3つの肖像》を挙げることができます。そしてナビ派の装飾絵画では、ヴュイヤール(Édouard Vuillard/1868-1940)のひとそろいの大型作品3点が挙げられます。これらの作品は、フランスの1905〜1910年の装飾美術の家具の数々、とりわけアール・ヌーヴォーからアール・デコへの移行において象徴的なアドリアン・カルボヴスキー(Adrien Karbowsky/1855-1945)の肘掛け椅子とともに展示されており、以前は見ることのできなかった価値ある作品群の一部です。さらにヴュイヤールの《書斎》など、以前はあまりよくない状態で展示されていた作品の数々にも注目することができるでしょう。《書斎》は完全に修復を終え、現在は鑑賞のために必要な距離が確保されています。以前はよくご覧いただくことができなかった作品であるため、一度見たことのある方でも、新しい発見をしていただけると思います。

▲ヴュイヤール《書斎》1911年
© RMN (Musée d'Orsay) / Hervé Lewandowski

▲パヴィヨン・アモンに展示されているアドリアン・カルボヴスキーの肘掛け椅子

 

▲照明が当てられ、より透明感が増す吉岡徳仁氏デザインのベンチ《Water block》

MMF:印象派ギャラリーのベンチは日本人デザイナーの吉岡徳仁(Tokujin Yoshioka/1967-)氏によるものですが、彼のデザインが選ばれた理由は何だったのでしょう?

X.R.氏:それはひと目惚れといってよいと思います。先ほども申し上げた通り、わたしたちは印象派の絵画に最もよく合う壁の色を見つけ出しました。しかし、わたしたちが現代的なカラーを求めていたのと同時に、ギ・コジュヴァル館長はデザインも現代的なものを取り入れ

▲マネの《草上の昼食》と《Water block》

たいと考えていました。コジュヴァル氏は吉岡徳仁氏の作品にまさしく魅了され、実際に吉岡氏と対面することで完全に理解し合いました。そして現在、彼のベンチは、フローリングのグレーの壁のある空間に申し分なく調和しています。素晴らしく美しい優美さがありますし、オルセーが望んだ現代的な作品を取り込むことにも成功しました。ガラスの透明感とベンチの製造上の高度な技術を来館者の方がよく分かるようにと、わたしたちはベンチにも照明の光を当てています。

▲現代デザインが採用されているオルセーの時計台裏の休憩スペース

MMF:吉岡氏のベンチの評判はいかがですか?

X.R.氏:吉岡氏のベンチは大変な成功を収めています。というのもフランスの複数のテレビ番組がこぞってこれらのベンチの製造面での並外れた特徴や、その輸送や設置方法、そしてギャラリー内に溶け込む様子を取り上げたからです。そのため来館者は以前よりもベンチに注意を払うようになりました。新しい展示室に初めてやってくると、彼らはベンチを堪能するために真っ先にそれらに座っています。

MMF:最後にオルセーに来館予定の日本の方々にメッセージをお願いします。

X.R.氏:日本人の来館者は、オルセーが特に大切に思っている方々です。というのも1980年代の開館以来、大変多くの日本人に来ていただき、彼らはオルセーの大事な常連客となっているからです。わたしたちは改装中の2010年、東京の国立新美術館において大きな展覧会(オルセー美術館展2010「ポスト印象派」)を開催し、日本とのパートナーシップを展開しました。またオルセーはわたしたちのメセナでもある日本の大手新聞社とも深い関係を持っています。この素晴らしく新しいコレクションの表現、とりわけ印象派コレクションを日本の皆さんにより楽しんでいただけるよう願っています。初めてパリを訪れる方や、パリを再訪される方々にも、よりよい展示となったわたしたちのコレクションを見に来ていただけたらと思います。

Update : 2012.2.1 文・写真(1,2ページ):増田葉子(Yoko Masuda)
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オルセー美術館 Musée d’Orsay

  • 所在地
    62, rue de Lille 75343 Paris
  • Tel
    +33 (0)1 40 49 48 14
  • URL
    http://www.musee-orsay.fr/fr/
  • 開館時間
    9:30-18:00
    木曜日は9:30-21:45
  • 休館日
    月曜日、1/1、5/1、12/25
  • 入館料
    一般:8ユーロ
    割引料金:5.5ユーロ
    18歳以下:無料
*情報はMMFwebサイト更新時のものです。予告なく変更となる場合がございます。詳細は美術館ホームページでご確認いただくか、MMFにご来館の上おたずねください。
 

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