リール、カレー、ダンケルク
グラーヴェリン、ブルブール
北フランスのミュゼレポート2009
注目の文化の発信地ノール=パ・ドゥ・カレー地方〜リール、カレー、ダンケルク〜
2008年秋から3回にわたりMMFでは、ピカソをはじめとした多くのアーティストを魅了した南仏のミュゼレポート2008をお送りしてきました。そして2009年の幕開けを飾る新年の特集は、フランスの新たな文化、芸術都市として注目を浴びている北フランスを取り上げます。ルーヴル・ランス美術館の開館を2012年に控え、2008年2月の公開以来フランスで大ヒットを記録した映画「Bienvenue Chez les Ch'tis(シュティの人々の地へようこそ)」の舞台になるなど、いま話題のフランス北部の魅力と、点在する個性豊かな美術館を2回連載でご紹介します。
“ヨーロッパ文化の  首都”リール
ロダンの彫刻と レースの街カレー
フランス第3の 港湾都市ダンケルク
アンソニー・カロ大回顧展
“ヨーロッパ文化の首都”リール
 英仏海峡とベルギーに隣接するフランス最北東部は、ノール=パ・ドゥ・カレー地方と呼ばれています。古くからフランドル地方と称されたベルギーやオランダ、そしてイギリス、ルクセンブルクなどに接するこの地方は、中世にはフランドル領、ハプスブルク家の支配地、18世紀にはスペイン継承戦争、そして20世紀に入ると第一次・第二次世界大戦と、侵略や数々の戦いの舞台となってきました。
▲リールの街の華やぎを伝える広場「グラン・プラス」。
OT Lille / © Don Muschter
 しかし反面、フランスの北の玄関口として近隣諸国との深い交流を育んできたのも事実です。結果、フランス中部とは異なる独自の文化が根付くことになりました。
 この地方の中心都市はパリから約200km離れた首府リール。ベルギーのブリュッセルにはTGVでわずか40分、ロンドンへは約1時間40分ほどで到着することができます。そして、フランスの初代大統領、シャルル・ド・ゴール(Charles-de-Gaulle)の生地としても知られるこのリールは、1985年、当時のギリシアの文化大臣メリナ・メルクーリ(Melina Mercouri)の提唱で始まった「ヨーロッパ文化首都」(Capitale de la culture européenne)に、2004年フランスで初めて指定された都市でもあり、ルーヴルに次ぐ国内で第2の規模を誇るミュゼ、リール美術宮殿も街の誇りとなっています。

▲4年にわたる改装工事を経て1997年6月に再オープンしたリール美術宮殿。
© maxime dufour photographies
▲地下はおもに中世、ルネサンス絵画、1階はブールデルを中心とした彫刻作品や陶器、2階はゴヤやモネ、ルノワール、ピカソらが並ぶ展示室がある。
© Claire Masset
 この地方の文化・美術活動を支えているのが、1975年に創立された「ノール=パ・ドゥ・カレー地方美術館学芸員協会」(L'Association des Conservateurs des musées du Nord-Pas de Calais)です。ノール=パ・ドゥ・カレー地方にある美術館の学芸員たちが協力し、コレクションの管理や展覧会の企画を行っている組織で、現在開催中のアンソニー・カロ展の同時開催でも大きな役割を果たしました。この地域に暮らす人々の団結力を示す一例でもあり、フランスにおいても珍しい組織でしょう。
 そして、この街にさらなる魅力が加わるのは、3年後の2012年。地方分権対策の一環として、パリのルーヴル美術館の分館の創設計画が持ち上がったのは2003年のことですが、その翌年、立候補した6都市の中からリールからほど近いランスにルーヴル・ランス美術館が建てられることが決定したのです。ヨーロッパの交通の要衝に位置するランスには、現在パリから1時間10分ほどで到着できるTGVの駅の建築も計画されています。パリとフランス北部の都市ランスで、ルーヴル美術館の“はしご”という豪華なアートツアーの実現も間近です。

取材:日向倫子(Michiko HYUGA)

“ヨーロッパ文化の  首都”リール
ロダンの彫刻と レースの街カレー
フランス第3の 港湾都市ダンケルク
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リール基本情報
  • パリからTGVで北へ1時間ほどに位置するノール=パ・ドゥ・カレー地方の首都。ドゥール川に囲まれた土地に拓かれたことから、フランス語で島を意味するリール(Lille)と名付けられた。各国から視察に来るという無人地下鉄が走る未来都市的な側面もあるが、近年旧市街も完全に改修され、新旧の美しい景観を楽しむことができる。
  • Office de tourisme de Lille(リール観光局)
    http://www.lilletourism.com/
ルーヴル・ランス美術館
(2012年オープン予定)
リール美術宮殿 MMFで出会える北フランスの美術館
  • URL
    北フランスには、今回ご紹介した美術館のほかにも「ラ・ピシーヌ、ルーベ工芸美術館」など、多くの美術館があります。MMFのB1Fインフォメーション・センターにて関連図書を閲覧いただけます。

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